研究課題
歯胚の発生過程においては、複数の遺伝子が発生段階に応じて制御されることで適切な歯冠・歯根形態が形成される。今までに歯の形態形成に関わる遺伝子は複数報告されているが、歯に特異的なbasic-helix-loop-helix(bHLH)転写因子は未だ報告がない。我々の研究グループでは、歯の遺伝子発現ライブラリより新規bHLH因子を同定し、AmeloDと命名した。本研究では、AmeloDの歯の発生における機能解析を行い、歯の形態形成に関わる新規分子機序を解明することを目的としている。令和元年度はAmeloDの遺伝子発現制御による歯冠・歯根形態の人為的制御法の開発を目指し、マウス歯胚の器官培養系にてAmeloDの機能解析を行った。平成30年度までの研究により、AmeloD欠損マウスでは歯冠・歯根長が野生型マウスに比較し有意に小さく、AmeloDの分子機能解析の結果、内エナメル上皮における細胞遊走能を制御し、歯胚の大きさに重要な因子であることがわかった。これらの知見より、AmeloDが人工歯胚の効率的な培養技術を考えた際の、歯冠・歯根形態の制御因子として有用であることが示唆された。そこで、発生過程のマウス歯胚を器官培養し、AmeloD遺伝子をsiRNAにより発現抑制したところ、臼歯歯胚ならびに切歯歯胚の大きさが有意に減少した。今後、AmeloD過剰発現系により歯胚の培養効率の向上が見られるかを検討する予定である。本研究により、歯の発生に関わる新規の分子機序として、転写因子AmeloDによる内エナメル上皮細胞の遊走能制御が、歯胚の形態形成に必須であるということが明らかとなった。これらの知見から、AmeloDが内エナメル上皮特異的マーカー遺伝子として有用である可能性、また歯の再生医療への応用という観点からはAmeloDが歯胚形態制御因子として有用である可能性が示された。
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Journal of Cell Biology
巻: 218 ページ: 3506~3525
https://doi.org/10.1083/jcb.201807178