研究課題/領域番号 |
18H06293
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
杉本 明日菜 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (80823830)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | PIEZO1 / 圧受容体 / 間葉系幹細胞 / 分化運命決定 |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞は再生医療への細胞ソースとして期待されており、その分化運命決定機構の解明は、新規の再生医療の技術開発への足掛かりとなる。本研究では、骨髄や歯髄に含まれる間葉系幹細胞の新規の分化運命決定機構について解明し、その新規応用法の開発を目指すことが目的である。 これまで、加圧刺激により間葉系幹細胞の骨芽細胞系細胞への分化が誘導されることに着目し、その分化機構について解析を行ってきた。その中で、骨髄や歯髄中に、圧受容体として働くカルシウムイオンチャネルであるPIEZO1が高く発現していることをみとめた。そして、PIEZO1を発現抑制した場合や機能阻害した場合には、加圧刺激によって誘導される間葉系幹細胞からの骨芽細胞系細胞への分化が抑制されることを明らかにした。さらに、加圧刺激がない状態でも、PIEZO1が活性化することで、ERKがリン酸化し、硬組織形成に重要なBMP2が誘導されることを明らかにした。 そこで本年度は、PIEZO1の間葉系幹細胞の分化運命決定機構の解明をさらに進めるべく、PIEZO1がカルシウムイオンチャネルであることに着目し、間葉系幹細胞を骨芽細胞系細胞へ分化誘導する機構についてカルシウムイオンおよびその他の細胞内シグナルとの関連について解析を行うこととした。本年度に実際に進捗できた事項としては、PIEZO1のC末端に存在するRRas結合領域について、Ras阻害剤を加えることにより、PIEZO1を活性化した時にみられるERKのリン酸化が抑制されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はカルシウムイオンとの関連について検討するため、Fura-4および塩化コバルトを用いて、細胞内外のカルシウム動態を解析した。しかし、これまでの条件設定を引き継いでの評価が困難であり、進捗は遅れている。カルシウムイオンとの関連についての検討はやや遅れているが、他の細胞内シグナルとの関連として、PIEZO1の活性化によるERKのリン酸化がRas阻害剤によって抑制されることがわかった。マウスモデルについては、現在、象牙質欠損モデルとして、マウス大臼歯を点状露髄させ、その部位にPIEZO1の活性化剤を塗布し、PIEZO1による新規の硬組織形成能を検討する準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策として、まずカルシウムシグナルとの関連について検討を進める。本年度ではカルシウムイオンを含有していない培養液を用いて、細胞内シグナルについての動態を検討する予定としており、すでに予備的な実験を進めている。 さらにPIEZO1のC末端のRRas結合領域を削除したDNAプラスミドを作成しており、これを用いてPIEZO1による骨芽細胞系細胞への分化促進とRasとの関与についてさらに検討することとしている。マウスモデルについては、予定どおり解析を進めるよう計画している。
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