研究課題/領域番号 |
18H06294
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
天眞 寛文 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 特任助教 (00829187)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | TAK1 / NLRP3インフラマソーム |
研究実績の概要 |
本研究は、RAの病的環境形成におけるTAK1の役割と、TAK1経路を標的とした新規の機序による抗炎症・骨破壊制御法を動物モデルで実証し新規治療法の開発を目的としている。関節リウマチのモデルマウスであるCIAマウスを用いて検討を行ったところ、TAK1阻害剤はCIAマウスの炎症および骨破壊を顕著に抑制した。NLRP3インフラマソームは免疫応答の一つであり、その異常な活性化が関節リウマチの病態に関与することが近年報告されているが、NLRP3インフラマソームの活性化を抑制する手段は未だ確立されていない。しかし、TAK1阻害剤はin vitoroにおいてNLRP3インフラマソームの活性化およびIL-1βの分泌を抑制した。免疫組織学的解析において、CIAマウス膝関節の滑膜組織に存在するマクロファージにはNLRP3が高発現しており、血中のIL-1β発現も上昇していたが、TAK1阻害剤はNLRP3の発現抑制と血中IL-1β濃度を低下させた。さらに、IL-1βはCIAマウスより採取した滑膜線維芽細胞における破骨細胞分化に重要な因子であるRANKLの遺伝子発現を上昇させ、破骨前駆細胞との共培養で破骨細胞分化を誘導したが、TAK1阻害剤はIL-1βの滑膜線維芽細胞におけるシグナル伝達を抑制することでRANKLの発現上昇を抑制し、破骨細胞分化を阻害した。さらに、TAK1阻害剤は破骨前駆細胞におけるRANKLのシグナル伝達を遮断し、破骨細胞分化を直接抑制した。 これらの結果より、TAK1阻害剤はNLRP3インフラマソームの活性化を阻害することでIL-1βの分泌を抑制することが可能であり、関節リウマチにおける炎症と骨破壊の双方を抑制できる、有効な治療戦略となり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、TAK1阻害剤が関節リウマチの動物モデルにおける炎症と骨破壊の双方を抑制することが明らかとなった。炎症抑制の機序として、病態への関与が示唆されているものの未だ有用な治療法が存在しないNLRP3インフラマソームに着目し、in vitroおよびin vivoにおいてTAK1阻害剤がその活性化やそれに伴うIL-1β分泌を抑制し得ることを見出した。さらに、TAK1阻害剤はIL-1βの滑膜線維芽細胞におけるシグナル伝達を抑制することこでRANKLの発現上昇を抑制し、破骨細胞分化を阻害すること、そして、TAK1阻害剤は破骨前駆細胞におけるRANKLのシグナル伝達を遮断し、破骨細胞分化を直接抑制することも明らかとなった。 これら重要な所見が蓄積されてきており、当初の実験計画の通り実験が行えていることから、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はNLRP3インフラマソームの活性化をin vitroで解析する際にTLR4のアゴニストであるLPSを用いたが、今後は実際に関節リウマチの病態下での発現が報告されているHMGB1などのファクターも用いて、TAK1阻害剤によるNLRP3インフラマソーム抑制の機序をより詳細に検討する。さらに、NLRP3インフラマソームの活性化と骨破壊との関係性において新たな知見を得るため、破骨細胞形成または活性化とNLRP3インフラマソームとの関わりを探索する。そして、TAK1阻害剤が既知の炎症増悪因子であるTNF-αやIL-6, IL-17などの発現およびシグナル伝達を抑制し得るかどうかの解析を加え、TAK1阻害剤が関節リウマチに対する新たな治療戦略となり得るかどうかの検討を続ける。
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