研究課題
本年度は、前年度に同定した口腔常在細菌叢(マイクロバイオーム)が大きく変化するタイミング前後のサンプルを用いて、構成比率が急激に増減する細菌種や早い段階から口腔に定着する細菌種のより詳細な同定を行った。以前の研究において乳幼児8名から縦断的に採取した舌苔サンプルのうち、大きな変化直前のサンプル(生後26-28週)と直後のサンプル(生後84-85週)をそれぞれ抽出し解析対象とした。より精密な解析を行うため、細菌共通配列プライマーの8Fと1492Rを用いて16S rRNA遺伝子の全長を増幅し、ロングリードシークエンサーのPacBio Sequelを用いて増幅断片の塩基配列を解読した。その後、得られた高精度の塩基配列情報から各サンプル中の細菌種を詳細に同定し、より細かいレベルでの細菌構成を明らかにした。その結果、16S rRNA遺伝子のV1-V2領域のみを用いたこれまでの解析では乳幼児初期から成人まで連続的に検出されると示唆されていたStreptococcus salivariusやRothia mucilaginosaのなかに、変化後に検出されなくなる種類や変化後から検出されるようになる種類が存在することが明らかとなった。つまり、乳幼児期の口腔において同じ菌種でも全く異なる動きをする菌株が存在することが示唆された。これらの菌はほとんど同じ遺伝子を持つことが予想されるため、今後これらの持つ遺伝子群を比較することで、口腔への常在細菌定着に関与する遺伝子のより効率的な同定が期待できる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
mSphere
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