MicroRNA(miRNA)は、標的mRNAの3末端非翻訳領域(3’-UTR)に結合し遺伝子発現を調節する。アメロチン(AMTN)は、接合上皮の内側基底板に限局して発現する分泌エナメルタンパク質であり、接合上皮の歯面への付着に関与する。本研究では、ヒト歯肉上皮細胞においてTNF-α誘導性のAMTN遺伝子転写に及ぼすmiR-200bの影響を解析した。Ca9-22細胞にmiR-200b発現ベクターを導入し、TNF-α(10 ng/ml)で12時間刺激後のAMTNとIKKβのmRNAおよびタンパク量を定量PCRまたはwestern blotで解析した。ヒトAMTN遺伝子プロモーター配列を含むルシフェラーゼ(LUC)プラスミドにmiR-200bの結合部位を含むAMTN 3’-UTR配列を挿入し、miR-200b発現ベクターと共にCa9-22に導入後、TNF-αで12時間刺激しLUCアッセイを行った。Ca9-22におけるTNF-α誘導性のAMTN mRNA発現は、miR-200b過剰発現で抑制された。Ca9-22をTNF-αで刺激するとIKKβ mRNAおよびタンパク量は増加したが、miR-200bを過剰発現させると抑制された。AMTN 3’-UTR LUCプラスミドをCa9-22に導入しTNF-αで刺激するとLUC活性は増加し、miR-200b過剰発現により活性上昇が抑制され、IKKβおよびNF-κB阻害剤存在下でほぼ完全に抑制された。以上の結果から、miR-200bはAMTN 3’-UTRを標的として直接的に、またはIKKβ mRNAを標的として間接的に、ヒトAMTN遺伝子の転写調節に関与する可能性が示唆された。
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