本研究の目的は、①日常的な整容(身だしなみ)行動や口腔保健行動と多面的なフレイルの関係を観察研究から同定し、②その結果と産学連携による多角的視点、および高齢者への質的調査から、整容行動に口腔保健行動を付加した美容向上によるフレイル予防プログラムを構築することである。 2018年度は研究①として、千葉県柏市在住高齢者を対象とした前向きコホート研究 (柏スタディ)第5次調査のデータを用い、整容・口腔保健行動とフレイルの因果関係を検証した。その結果、整容に対する意識や行動が低い高齢者では、フレイルやオーラルフレイルの有症率が高いことが明らかとなった。特に女性において、先行研究の多い「化粧」よりも「整容意識」と「表情の豊かさ」がフレイルに強く関連したことより、高齢者の多様な整容の維持・向上が必要であることが示唆された。 2019年度は研究②として、研究①の結果を踏まえたフレイル予防プログラムを民間企業有識者と共に開発した。プログラムの内容は、加齢に伴う表情筋、声、口腔内の変化について、健康面よりも美容面をより訴求した予防・改善策を提供するものとした。さらに、首都圏在住高齢女性12名を対象としたフレイル予防プログラムの受容性探索調査(定性調査)を実施した。美容や健康への関心度の異なる3グループ(各4名)に対し、プログラムの内容に対する受容性やフレイル・オーラルフレイルに対する意識実態をグループインタビューにて調査し、課題・問題点やその背景要因を抽出した。
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