研究課題/領域番号 |
18H06311
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山口 優 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (50823308)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | Rab44 / 破骨細胞 / カルシウム感受性 / Rab GTPase |
研究実績の概要 |
1.Rab44結合タンパク質の同定 Rab44過剰発現細胞を用いてRab44プルダウンアッセイを行い、結合候補分子を質量分析法により同定した。その後、野生型、恒常的活性型(GTP型)、恒常的不活性型(GDP型)のRab44を発現させた細胞でRANKL刺激時、非刺激時での免疫沈降実験を行い、結合タンパク質の差異を検証した。結果、2種類のタンパク質が同定され、それぞれ恒常的活性型、不活性型に特異的に結合することがわかった。このことより、Rab44はGTPaseの活性、不活性により結合タンパク質を切り替えていることが明らかになった。またRANKLでの刺激の有無によって結合が影響を受けることを明らかにした。恒常的活性型ではRANKL刺激により結合候補分子と結合できなくなることがわかった。 2.Rab44のカルシウム感受性の解析 Rab44遺伝子はカルシウム結合領域であるEFハンドモチーフを持つ。したがって、カルシウム感受性の違いを検討した。カルシウムイオノフォアであるML-SA1刺激による野生型、恒常的活性型、恒常的不活性型Rab44の局在変化を観察した。結果、ML-SA1による局在の変化は観察されなかった。 3.Rab44遺伝子欠損マウスの作製および骨組織・骨代謝解析 Rab44遺伝子欠損マウスを作製した。遺伝子欠損マウスから骨髄細胞を採取し、破骨細胞へと分化させると、野生型マウスに比べて分化が促進され、破骨細胞数の増加と巨大化が認められた。これはこれまで明らかにしたマウスマクロファージ様細胞RAW-D細胞での実験結果と一致する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は実験計画通り、Rab44結合タンパク質の同定、Rab44のカルシウム感受性の解析、Rab44遺伝子欠損マウスの作製による機能解析を行った。結合タンパク質の実験では、Rab44遺伝子の過剰発現系を用いて、プルダウンアッセイを行い、結合タンパク質をプロテオーム解析により2つの結合候補分子を同定した。Rab44のカルシウム感受性の解析では、マウスRab44のアイソフォームにEFハンドモチーフを持つものが存在することが明らかになったので、マウス骨髄細胞からEFハンドモチーフを持ったRab44のcDNAを作製した。このcDNAを元にEFハンドを持つRab44過剰発現細胞を作製し、カルシウムイオノフォア刺激による局在変化を検討した。Rab44遺伝子欠損マウスでは、細胞レベルでの解析で破骨細胞の分化促進が起こっていることを示した。 以上のことより当初の研究計画通り、研究が進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1.Rab44結合タンパク質の同定 同定された2つの結合タンパクに関して過剰発現細胞を作成し、Rab44と結合するかの確認実験を行う。また、この発現細胞を用いた破骨細胞分化実験を行うことで分化に対する影響を調べる。Rab44はRab45、CRACR2aと同様に高分子Rab GTPaseに分類される。Rab45及びCRACR2aはダイニン、ダイナクチン複合体と結合することによって微小管依存性の輸送を制御していることが明らかになっている。このことから、ダイニン、ダイナクチンと複合体を形成するかのプルダウンアッセイを行う予定である。 2.Rab44のカルシウム感受性の解析 カルシウムイオノフォアであるML-SA1刺激による野生型、恒常的活性型、恒常的不活性型Rab44の局在の変化は観察されなかった。このため別のカルシウムイオノフォアであるイオノマイシンによる刺激で同様の実験を行い、局在変化をみる。またRab44の局在の変化だけでなく、粒子径の変化や時間依存性の変化が起こっていないかの解析も行なっていく予定である。 3.Rab44遺伝子欠損マウスの作製および骨組織・骨代謝解析 当初の予定通り、Rab44遺伝子欠損マウスを用いて、個体レベルでの解析を行う。Rab44遺伝子欠損の胎生期マウスあるいは生後数日のマウスの透明骨格標本を作製し、マウス個体レベルでの硬骨形成程度の比較を行う。さらに成長したマウスに対しては大腿骨、椎骨などのX線解析を行い、固定後脱灰パラフィン切片や非脱灰樹脂切片を作製し、HE染色、TRAP染色を行い、骨形成を比較する。また非脱灰樹脂標本を作製し骨組織形態計測を行う。骨量、海綿骨数などの計測にはマイクロCT解析を用いる。
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