研究概要:片側性口唇口蓋裂児は最大圧力、最大速度、鼻腔抵抗値が大きかったことから、鼻腔通気障害が生じていることが示された。その原因として、患側に鼻中隔が湾曲していることで患側の鼻腔断面積が小さくなり、鼻腔抵抗が大きくなったと考えられた。 また、上顎急速拡大を行うことで、患側の鼻腔断面積が特異的に大きく拡大された。これは患側が minor segmentであるため、顎整形力がより大きく作用したためと考えた。その結果、片側性口唇口蓋裂児の最大圧力、最大速度、鼻腔抵抗値が軽減したことから、鼻腔通気障害が改善することを示していた。 本研究は正常な小児の場合発症頻度が2%とされる閉塞性睡眠時無呼吸症候群が、口唇口蓋裂児では30%から50%と非常に高く、その原因が鼻中隔湾曲による鼻腔通気障害に起因することを強く示す結果となった。さらに、その治療方法として、上顎急速拡大の有効性を示すことができた。このことは、一般に鼻中隔湾曲を改善するには外科的手術が必要になるが、その侵襲による、その後、著しい成長抑制のため、成人にしか適用されない。そのため、小児で鼻中隔湾曲を認める場合、これまで治療方法の選択ができなかったが、非侵襲的な方法として上顎急速拡大を発案できたことは臨床的に有用な知見を得た 。その結果、第57回日本小児歯科学会では町田賞優秀発表賞を受賞し、論文はインパクトファクター付の外国語雑誌の表紙に採択され、高い評価を受けた。
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