本研究では、骨細胞がメカニカルストレスを感知し、RANKLを発現するメカニズムの解明のため、矯正学的歯の移動時の骨細胞の RANKL 発現作用ならびに標的遺伝子を探索することを目的とする。これまで、歯周組織構成細胞を単離する新規分画系を確立し、野生型マウスの歯周組織における RANKL 発現を解析した結果、歯根膜細胞や骨芽細胞と比較し、骨細胞で RANKLの高い発現が見出された。さらにTnfsf11flox/Δ; Dmp1-Creマウスでの歯の移動実験を行ったところ、対照群と比較して移動量が有意に低下し、圧迫側における破骨細胞数が減少していた。以上の結果から、矯正力に伴う骨吸収において、骨細胞が、歯槽骨のリモデリングを制御する RANKL の主要な発現細胞であることを示した。 矯正力負荷時の骨細胞の動態を細胞レベルで確認する為、骨細胞への流体剪断応力(FFSS)を用いた力学刺激付与実験を行った。マウス骨細胞様細胞株(MLO-Y4)を、type1 collagen コートディッシュに播種し、5%FBS、5%CS、1%ペニシリンストレプトマイシンを添加したa-MEMにて培養した。FFSSは電磁式オービタルシェーカーを用い、先行研究を参考に120rpmの回転速度でCO2インキュベーター内で遠心力を付与した。FFSS付与開始48hr前にMLO-Y4を播種し、FFSS付与0時間をコントロール群、FFSS付与3時間をFFSS3群、6時間をFFSS6群とし、各力学負荷終了後細胞を回収しRT-PCRにて遺伝子発現解析を行った。組織学的、生化学的解析を行うためにサンプルの採取方法に関する再検討を要したため、実験条件の設定は確立しつつあるものの、統計学的解析による明確な結果は得ることはできなかった。現在力学刺激負荷が終了し、RT-PCRにてRANKL、OPG、Opnなどの発現を確認している。
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