先天性疾患の3分の1に顎顔面に異常が認められることは、その顎顔面の発生メカニズムが内外の変化によって簡単に破綻するほど脆弱であることも意味する。タンパクをコードしないmicroRNAは、ターゲットのmRNAと結合することによりタンパク量を調節する。microRNAの欠損は、顎顔面のほとんどを欠損させることが報告されており、microRNAが顎顔面形成のメインプレーヤーの一つである事を示している。しかし、顎顔面がほとんど形成されないという表現形は、重篤すぎて機能解析には適さない。顎顔面の発生は、半日単位での継時的な変化を大きな特徴とするため、重篤すぎる表現形への対応は、任意の時期で遺伝子を欠損させるような時間軸を考慮した研究デザインにより回避できる。そこで本研究では、組織特異的欠損Cre-LoxPシステムにERを導入することにより、microRNAを好きな時期に欠損させることで、顎顔面発生メカニズムにおけるmicroRNAの機能の把握を目指す。そのために、ERの導入されたDicer;Gli1ERTCreを作成した。しかし、母親マウスへのタモキシフェンの投与を行なっても胎児においてDicerの欠損の誘導は認められなかった。胎児への十分な量のタモキシフェンが到達しなかったと考えられる。そこで、胎児をroll bottle法による器官培養を行う中で、培養液へタモキシフェンを投与する方法を試みた。Dicer;Gli1ERTCre マウスの頭部のroll bottle法による器官培養に、4-OH-タモキシフェンを添加し、正中と舌の形成異常を確認した。
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