研究実績の概要 |
令和元年度は、昨年度樹立したマウス口腔癌細胞株であるSCCVII-ZsGreen1細胞およびNR-S1-ZsGreen1細胞をC3H/HeNマウスの舌に接種し、新たな頸部リンパ節転移動物実験モデルの確立とその解析を行った。 これらの細胞を1,000,0000個/mlになるように調整し、そのうち100μlをヌードマウス舌に接種した。腫瘍の増殖はポータブルの紫外線照射器によって緑色蛍光の口腔癌細胞の増大を観察でき、さらには頸部リンパ節への転移も確認できた。約2週間後に原発巣および頸部の転移リンパ節を切除した。頸部リンパ節転移巣は紫外線照射化に摘出した。通法にしたがってパラフィン切片を作製し、組織学的検討を行い、リンパ節転移を確認した。以上の結果より、SCCVII-ZsGreen1細胞およびNR-S1-ZsGreen1細胞は口腔癌頸部リンパ節転移を再現し、癌微小環境や癌免疫も解析できる有益な動物実験モデルとして応用可能であることが明らかとなった。 さらに、以前我々が樹立したヒト口腔癌細胞株の頸部リンパ節高転移株であるV-SAS-LM8細胞を用いて頸部リンパ節の節外進展の再現を試みた。V-SAS-LM8細胞ならびにその親株であるV-SAS細胞を上記同様ヌードマウス舌に接種し、パラフィン切片を作製した。以前の報告の通り、V-SAS-LM8では高頻度に頸部リンパ節への転移を確認でき、V-SAS-LM8では転移リンパ節での節外進展を疑う所見を得た。以上の結果より、V-SAS-LM8細胞は、口腔癌細胞の転移リンパ節の節外進展メカニズムを探索するうえで、有用なツールとなり得ることが明らかとなった。 今後は、これらのモデルマウスや臨床検体を用いて、頸部リンパ節転移節外進展を制御する因子を特定し、その分子メカニズム解明、ならびにメカニズムに基づいた新たな口腔癌治療戦略の開発に貢献していく予定である。
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