研究課題/領域番号 |
18H06329
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
坂田 純基 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (70823326)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 口腔白板症 / 抗癌剤抵抗性 / SMAD4 / 発癌 |
研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌 (OSCC) は口腔癌の 80%を占める疾患で、医療技術の進歩にも関わらず治療成績の劇的な向上には至っていない。また本邦における口腔癌罹患数および死亡者数は増加傾向にある。その原因として浸潤・転移能や抗癌剤・放射線抵抗性を有する難治性癌の存在や、その発癌機構に不明な点が多いことがあげられる。われわれはこれまでに口腔前癌病変である口腔白板症(OL)の癌化とSMAD4の発現低下との関連性について新知見を明らかにした(Sakata et al. Cancer Med 2017)。そこでさらに、SMAD4の発現低下が癌化に寄与した機序の解明として、過去の報告を踏まえSMAD4発現と微小環境と関連性やゲノム不安定性に関与する遺伝子の変化に着目し検討を行い、SMAD4低発現症例でFOXP3陽性リンパ球が有意に多く浸潤していること、SMAD4の発現を抑制した角化細胞株でRAD51やBRCAの発現が低下していることを確認した。またOSCCにおけるSMAD4発現についても評価を行い、SMAD4の発現が低下しているOSCC症例は頸部リンパ節転移が有意に多く、化学放射線治療の治療効果が不良であり、予後も不良であることを確認した。また、SMAD4の発現を抑制したOSCC細胞株で悪性形質の変化について検討を行っているところである。これらの結果はSMAD4がOLの癌化予測マーカーとして有用であり、OSCCの早期発見や予防に応用できる可能性、OSCCの予後予測マーカー、化学放射線療法の治療効果予測マーカーとして応用できる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OL組織検体を用いて、制御性T細胞のマーカーであるFOXP3の免疫組織化学染色を行いFOXP3陽性リンパ球の浸潤程度を検討した。その結果、FOXP3陽性リンパ球がSMAD4の発現が低下しているOLで有意に多く浸潤しており、FOXP3陽性リンパ球数はOLの癌化とも相関を認めた。この内容については現在論文を投稿中である。またOSCC組織検体を用いてSMAD4の免疫組織化学染色にてその発現についても評価を行い、SMAD4低発現症例では有意に頸部リンパ節転移陽性症例が多く、化学放射線治療の治療効果が不良であり、予後も不良であることを確認した。さらにOSCC細胞株でSMAD4発現を抑制し薬剤感受性試験を行ったところ、SMAD4の発現を抑制した細胞で抗癌剤CDDPと5-FUの感受性が有意に低下しており、アポトーシス細胞が有意に減少していることを確認した。一方で、放射線感受性については有意な変化は認められなかった。また、細胞浸潤アッセイや創傷治癒アッセイで遊走能や浸潤能の変化について検討したが、SMAD4の発現抑制による変化は認められなかった。ここまでの内容については2018年11月2-4日に開催された第63回日本口腔外科学会総会・学術大会において発表し、優秀ポスター賞を受賞している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、抗癌剤感受性についてはSMAD4発現抑制による変化が確認できているため、抗癌剤抵抗性に関連する分子機構に関して、SMAD4を抑制した細胞株にて網羅的な遺伝子発現解析を行って関連する遺伝子を探索し、その分子メカニズムの解明を行う。さらにSMAD4によるOSCCの治療抵抗性への影響の評価を、SMAD4の発現を阻害または過剰発現させたOSCC細胞を用いた皮下移植モデルで抗癌剤耐性を評価する。さらに、得られた腫瘍片サンプルを使用して分子機構への影響を解析する。 転移能については、血管・リンパ管新生等のまだ検討していない機序に着目し、SMAD4の発現抑制による変化について検討を行う。
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