近年、舌突出癖などの「口腔機能発達不全症」により、不正咬合を有する患児に遭遇する機会が増えてきている。このような背景からも、我々小児歯科医は齲蝕管理のみでなく、口腔機能に関するアプローチを行うことが今後さらに重要になってきていると考えられる。しかしながら、舌の機能評価法については、未だ明確な基準が定まっていないのが現状である。そこで我々は言語療法で治療の際に用いられているElectropalatography(EPG)に着目した。このシステムは、電極を配置した口蓋プレートを利用して口蓋に接触する舌の位置を外部に表出できる舌位評価装置である。 これを利用し、構音時の舌の口蓋への接触パターンについて調査を行った。構音では、聴覚のみでは判定ができなかった「(あ)さ」「(あ)ち」発音時での異常な接触状態が表記され、発音時での舌の異常な運動をとらえることができた。また、「(あ)た」発音時では、被験者らの口蓋接触パターンには違いがなく、発音時のビデオ撮影から舌の突出が観察された。EPGシステムは構音だけでなく嚥下時の舌の動きの異常をとらえることができ、口腔機能発達不全の診断と治療に効果的であることが示された。また、歯科医師による構音異常の判定に有用であることもわかり、歯科医療と言語療法の多職種間連携による取り組みが可能となることが分かった。 EPGシステムは、舌の機能異常を客観的に評価できる診断ツールとして期待できるため、今後は歯科医療にも積極的に取り入れ活用してきたいと考えている。
|