研究課題/領域番号 |
19K21421
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
神田 浩路 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70628718)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 狂犬病 / スリランカ / 撲滅 / システマティックレビュー |
研究実績の概要 |
南アジアの島国、スリランカでは狂犬病撲滅のカウントダウンが始まっているが、これまで同国の狂犬病対策の成果をまとめたものはなく、その成果を政策に反映して有効活用された事例がないことから、1946年から2018年末までに発行された同国において実施された調査研究に関する学術論文等を体系的に収集し、その内容を分析して狂犬病対策における現状を考察した。また、同国政府が刊行する統計資料等から狂犬病に関連するデータを抽出して、その動向を分析した。 その結果、抽出された107編のうち、約3分の2はヒトまたは動物を対象とした研究で、ヒトと動物の割合は半数ずつであった。ヒトを対象とした研究では曝露後予防に関するものが最も多く、咬傷後の医療機関受診までの行動や曝露後の予防接種告知に関するシステム導入例、またスリランカを含む狂犬病流行国から自国へ帰国後の免疫グロブリン接種に関する記述が見られた。その他、地域住民の狂犬病に関する知識や意識の向上、予防行動変容に関する調査も国内の複数の地域で実施され、またスリランカを起源とするヨーロッパ諸国における輸入症例の報告もあった。一方、動物を対象とした研究では、野犬駆除に苦慮する同国の現状を反映してイヌの生態に関するものが多く、飼い犬の予防接種や野犬の去勢手術に関する記述が多く見られた。なお、ヒトに関する研究も動物に関する研究も調査対象地域には偏りがあった。その他の論文では、狂犬病に関する主要会議の報告や要人の狂犬病対策に関する演説記録などがあり、とくに近年では狂犬病ウイルスの分子疫学的、遺伝学的研究の報告もあった。 その他、同国における狂犬病対策を客観的に評価するため、2030年までに地域内での狂犬病撲滅を目指している東南アジア諸国における対策の現状を把握すべく狂犬病が未だ広く流行しているミャンマーを取り上げ、同国の現状を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、日本国内とスリランカ国内にて、スリランカの狂犬病対策における過去の経験や手法、調査研究結果等が記載された狂犬病関連資料の収集及びデータベース化を継続し、2018年末までに刊行されたスリランカ国内外の学術論文107編を対象に分析を行った。詳細な分析は現在実施中であるが、途中経過として国内外の学会にて合計3編報告した。うち1編は、2030年までに狂犬病撲滅を掲げている東南アジアの1国、ミャンマーの現状も取り上げ、スリランカにおける狂犬病対策を客観的に評価するとともに国際学会のProceedingsとして刊行した。 また、スリランカ政府は同国における狂犬病撲滅目標が2020年から2025年へ延長したことに伴い、現地の研究協力者と協議のうえで、2019年末までの成果を取りまとめることで一致し、さらなる文献収集及びその内容の精査を進め、2025年撲滅に向けた政策提言をすることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、昨年度と同様、追加となった2019年末までに刊行された文献の電子登録及び狂犬病対策別の分類を完了させ、システマティックレビューを実施して対策の効果(インパクト)を評価する。そして、2025年撲滅に向けて、今後スリランカ政府がどの様な対策を推進していくべきか、提言をまとめる。 また、すでに狂犬病対策における他国の事例としてミャンマーを取り上げたが、スリランカ以外で狂犬病対策を推進している国、また撲滅を達成した国の関連資料もオンラインデータベース等を活用して収集し、詳細分析を実施できるようデータベース化するとともに、スリランカに適用できる狂犬病撲滅を可能にするための決定要因を明らかにし、対策に有効な教訓をまとめる。 これらの研究により、スリランカにおける2025年までの狂犬病撲滅という目標達成に向けたより効果的な対策を提言するとともに、得られた結果を取りまとめて成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本事業採択時のスリランカにおける狂犬病撲滅達成期限は2020年末と定められていたが、スリランカ政府は昨年、達成目標を20205年末に延長した。そのため、同国が取るべき今後5年間の狂犬病対策及び撲滅達成後の施策を提言すべく、現地の研究協力者と協議し、分析対象となる学術文献の範囲を2019年末までに刊行されたものに拡大してその分析結果を論文投稿するとともに20205年撲滅に向けた政策提言をすることとなった。したがって、次年度使用額は追加の文献収集及び分析、論文投稿の費用に充てる。
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