今年度は、スリランカにおける狂犬病撲滅目標が2025年に設定されたことに伴い、2019年末までに公表されたスリランカにおける研究成果を集約し、現地の研究協力者と内容を精査するとともに、我が国を含む狂犬病撲滅を達成・維持している国々の関連資料の分析及びスリランカへの適用可能事例の抽出により、2025年撲滅に向けた政策提言をまとめた。 その結果、①飼い犬及び野犬の予防接種率向上とそれに伴う野犬数のコントロール、②学校教育等を通じた子どもの、また子どもを通じた社会全体の衛生予防観念の向上、③医学、獣医学、農学の専門家や実務家らによる分野横断的な連携及び国際援助機関等による支援、④人と犬のサーベイランスデータの系統的な収集及びデータの質向上、の4点を重点的に推進すべき対策とした。特に、①においては予防接種率の70%達成が撲滅へ向けた大きなマイルストーンになるが、近年は正確なデータが算出されておらず、既出のものでも50%前後で頭打ちとなっていることから、④と連動して収集体制の改善及び透明化が必須であり、③の他分野との協働を通じて早急に改善しなければならない。また、②においては過去にスリランカにてパイロット研究を通じた成功事例があることから、学校教育等を通じた予防啓発意識の向上によって地域社会に広く狂犬病予防に対する認識及び行動変容を浸透させる必要がある。 これらの対策により、横ばい状態となっている狂犬病死者数をさらに減少させることが可能になるとともに、狂犬病ウイルスの分子生物学的研究や遺伝子解析も併せて実施することによって早期の狂犬病終息を達成することができると考えられる。
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