研究課題/領域番号 |
19K21423
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
堀 大介 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10823693)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NIRS / 社会的報酬 / 脳機能 / 褒め / 感謝 / 対人関係 / 労働者 / 職域 |
研究実績の概要 |
対人関係にストレスを感じている労働者は多い。一方、職場で感謝されたり褒められたりすることで対人関係が円滑にするに留まらず、モチベーション維持やパフォーマンス向上にも繋がると報告されている。本研究では、職場の対人関係の中で感謝されたり褒められたりした際の脳活動を定量化した。脳活動の計測には近赤外線分光法(NIRS: Near-infrared spectroscopy)を用いた。 平成30年度に実験計画を策定し、倫理委員会で承認を得た。平成31年度に被験者を募集し、実験を遂行した。被験者は2名1組、合計10組20名の右利きの健常成人労働者であった。被験者は実験に先立ち、組になった相手に対して感謝を感じた出来事や、長所を褒める手紙を書いた。実験では、二名一組が向かい合って座り、手紙を読む役と聞く役を交互に担当した。聞く役はNIRS装置を装着し、酸素化ヘモグロビン濃度(OxyHb)の変化が測定された。手紙と対照となる刺激として、天気や日時に関する話を聞くパートを設けた。また、POMS2-A(Profile of Mood States 2nd edition)短縮版によって実験の前後による気分の変化も測定した。実験の最後には相手と手紙を交換した。OxyHbの変化を反復測定分散分析によって解析した。結果、左右の背外側前頭前野に当たるチャンネルにおいて、感謝・褒めの手紙を読み上げられた際の方が対照の刺激と比べ、OxyHbの変化が統計学的に有意に大きかった。さらに、実験の前後で、怒り-敵意や混乱-当惑など5種の気分尺度が統計学的に有意に減少した。 本研究は、職場での感謝や褒めといったポジティブフィードバックが労働者の健康に与える影響を検討する第一歩である。令和2年度に獲得した若手研究では、職場で感謝を表明することが、心身の健康の維持増進に繋がるのかを明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度に研究計画を策定し、倫理委員会の承認を得、実験を開始するための機器や調査票などの準備を整えた。平成31年度に被験者の募集、および実験を遂行した。しかし、実験データの解析や成果発表には遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症の影響で、予算の繰り越しが必要となった。令和二年度に学会発表、追加解析、および論文の投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響で、ポスター発表を予定していた学会が次年度に延期となった。加えて、追加の解析を行い、論文を執筆している最中である。以上の理由で、学会の参加とそれに伴う旅費、および論文の投稿料に次年度使用額を充てる。
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