認知症の介護において困りごととして扱われ易いのは、物忘れ以上に精神・行動異常が多い。精神・行動異常は患者や介護者の社会生活の破綻をもたらす深刻な症状である。多彩な精神・行動異常を呈するレビー小体型認知症は、認知症全体の約20%を占め、アルツハイマー型認知症の次に頻度の高い変性性認知症性疾患として知られている。精神・行動異常の中でも特に「幻視 (現実には存在しない対象が見えてしまう、視覚性の幻覚のこと)」が70%以上ものレビー小体型認知症患者に生じ、それによって50%以上の患者が恐怖や不安を抱き,苦しみ悩まされるといわれている。しかしながら、レビー小体型認知症の介護やケアにおいて、幻視を的確に治療することが重要とされているものの、その治療技術はいまだ十分ではない。レビー小体型認知症患者の幻視に対して、非薬物療法を用いた治療の有効性を理解することが本研究の目的である。 本年度は約30名分のレビー小体型認知症患者についての臨床情報、認知機能、精神症状に関するデータを取得した。またこれらの患者のMRI、IMP-SPECTのデータも取得した。恐怖や不安などの陰性気分と認知機能や幻覚をはじめとする精神症状との関連について検討し、陰性気分が幻視と類似した錯視(パレイドリア反応)を増強させることが明らかとなった。以上の結果から、レビー小体型認知症患者の介護において、幻視を増悪させないよう恐怖や不安を軽減させることが重要である可能性が示唆された。MRIデータ、SPECTデータについては現在解析を進めている最中である。
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