研究課題/領域番号 |
18H06347
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
行松 直 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 医員 (50823572)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 芳香族アミン / 膀胱発がん / AAOT / OTD |
研究実績の概要 |
芳香族アミンによる職業性膀胱発がんは以前より知られているが、その詳細な発生メカニズムは未だ十分に明らかとなっていない。近年、日本の化学工場でo-toluidine(OTD)などの芳香族アミンを扱った従業員らが膀胱がんを発症したことが報告されている。上述の工場ではOTDを原料とし、OTDと類似した構造をもつacetoaceto-o-toluidide(AAOT)を製造していた。近年、化学物質の毒性予測として、類似の構造をもつ化学物質(同族体)は類似の毒性を示すという「構造活性相関」が注目されており、またOTDはIARC(国際がん研究機関)にてgroup1(ヒトに対する発がん性の十分な証拠がある)に分類されていることから、OTDと類似構造を有するAAOTについても膀胱発がん性を有する可能性が否定できない。 これまでに、申請者らはAAOTの短期毒性試験を行い、AAOTがラット膀胱粘膜上皮に対して細胞増殖能の亢進およびDNA傷害を用量相関性に生じさせたことを明らかにしている。AAOT投与により生じた膀胱粘膜上皮に対する種々の影響がAAOTにより引き起こされたのか、あるいはAAOTの代謝産物が引き起こしているのか明らかにする必要がある。 本研究では、AAOTの膀胱発がん促進作用の有無、AAOTの代謝、発がんメカニズムを明らかにし、AAOTなどの芳香族アミンによるリスク評価に資することを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①AAOTの膀胱発がん促進作用の検討 6週齢のF344ラット(雄、雌)に既知の膀胱発がん物質であるN-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN)を4週間投与、1週間休薬後、AAOTを混餌で0%、0.167%、0.5%、1.5%の濃度で31週間投与するAAOT2段階発がん試験を行った。対照群と比較し、雄雌ともに0.5%以上のAAOT投与群では膀胱腫瘍の発生率、発生数が有意に増加した。また、36週時のラットの尿中にAAOTよりも著明に高濃度のOTDが検出された。 この結果から、AAOTは雄雌ともに膀胱発がん促進作用を有することが明らかとなった。また、AAOTが既知の膀胱発がん物質であるOTDに代謝され尿中に排泄されることが膀胱発がん促進作用に関与している可能性があると考えられた。
②AAOTの膀胱発がんメカニズムに関する検討 6週齢のF344ラットにAAOTを混餌で0%,膀胱発がん促進作用を来たさなかった0.167%、膀胱発がん促進作用を来たした1.5%の濃度で4週間投与した。ラット膀胱上皮を採取し、網羅的遺伝子発現解析を施行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
①AAOTの膀胱発がんメカニズムの検討 6週齢のF344ラットにAAOTを混餌で0%,膀胱発がん促進作用を来たさなかった0.167%、膀胱発がん促進作用を来たした1.5%の濃度で4週間投与した。ラット膀胱上皮を採取までは既に終了している。 膀胱上皮からRNAを抽出、網羅的遺伝子発現解析を施行し、AAOTによる膀胱発がん促進、発がんメカニズムを明らかとする。 また、OTDはOTDの代謝産物であるN-hydroxy OTDがguanineとDNA付加体を形成し、膀胱発がんを来たすことが知られている。上述のラット膀胱上皮からDNAを抽出し、DNA付加体形成の有無を確認する。
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