研究課題/領域番号 |
18H06349
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
匂坂 量 国士舘大学, 救急システム研究科, 助手 (20828652)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 心停止 / 通報 / 通信指令員 / 認識 / コミュニケーション / 119番 |
研究実績の概要 |
通報者自身が心停止をどのように読み取り、表現をするのかに着目し、一般市民に広く理解される問いかけの方法を検討するため、本年度は、通報者が心停止をいかに読み取り、表現するかについて以下の調査を行った。 心停止またはその疑いがある典型的な以下の3つの動画を作成した。①明らかな心停止症例、②心停止と疑いそうな症例、③非心停止と疑いそうな症例。動画は、心停止の実際に詳しい、消防所属の救急救命士とともに作成した。また、より実際の対応状況に近づけるために、ウェアラブルカメラを使用し、一人称の動画とした。本調査を実施する前に、動画の問題点や質問の適格性の調査のため、プレ実験を実施し問題を修正した。そして、各動画に対し、一般人100人(計300人)を対象にインターネット調査会社を通じ調査を実施し、心停止をどのように表現するかの調査を行った。調査内容は、個人の特徴に加え、動画に対してオープンクエスチョンの教示文(例:119番通報時に「呼吸はどうですか?」と聞かれました、どう答えますか?)を与え、自由式の回答を得た。本年度は、上記にデータ収集及び回答の適正の分析を行った。当初の計画においてエラーデータが20%発生すると考えサンプリングを実施したが、各自由回答に対する最大エラー割合は10%という結果であった。この収集データをもとに来年度は、テキストマイニングを中心とした詳細の分析を行う。 これらの研究の結果は、心停止の早期認識を補助する。以前より明らかとなっているように、早期の認識は救命率の向上と関連する。本研究はその一助となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、本年度に一次的な解析を完了する予定であったが、プレ調査において調査内容の大幅な変更が必要となったことにより、調査までとなった。 具体的には、作成した動画の構成が一般市民には見にくいとの意見が散見されたため、指摘に沿い動画を再度作成した。また、インターネット調査においては、被験者の心停止の理解と表現が一致してしまうことが、明らかとなった。つまり、テキストデータを打ち込むときにすでに「心停止の認識」よりも「状況の説明」に切り替わってしまっていることが明らかとなった。そのため、本年度の調査においては、通報時の発話に焦点を絞り上記2点の改善を図り、再度プレ調査を実施したため、計画していた一次解析まで終えることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、収集した調査内容のテキストマイニングを行い、心停止時に特徴的な発話表現の特定を行う。 具体的には、3つの動画調査別に対し特徴語を抽出するためIF-IDF法を用いる。その後、上位の特徴語を選定し、コレスポンデンス分析により、データの視覚化を試みる。 加えて、本年度の調査では収集できなかった通報者の心停止の理解に関して追加の調査を実施する計画を立てている。具体的には、心理学の専門家に相談のもと被験者1名ずつに本年度作成した動画を視聴させ、心停止をどのように理解したかについて半構造化面接を実施する。この調査により、心理的な特徴の分析が可能であると考えている。 さらに、上記の通報者の心停止の理解および表現の特徴を特定したうえで、通信指令における有効的な質問内容を発案する。これは、消防の通信指令員と救急医を交えコンセンサスを図る。この際、主観性が強くなり過ぎないよう、意見の一致性をα係数を算出し、定量化する。その後、従来法(数か所の消防本部のプロトコル)との比較を行うため、本年度使用した3つの動画に対し、インターネット調査で実施を行う。その際に、事前のサンプルサイズを算出し、統計学的な効率化を図る予定である。
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