研究実績の概要 |
本研究は, 通報者自身が心停止の患者を目の前にした際, その状況をどのように読み取り, 表現をするのかに着目し, 一般市民に広く理解される消防通信指令の問いかけの方法を検討することを目的に実施した. 本研究では, ①心停止, ②死戦期呼吸, ③意識障害を一人称視点でバイスタンダーが発見する動画を作成し, それぞれ100サンプルをインターネット調査で集めた. 一般市民の自然な発話に近い状況を分析するため, 質問項目は自由記述とした(例,呼吸の状態について尋ねられたらなんと答えますか?). 集めたデータに対し, 自然言語処理を行い,判断となる特徴語および表現を分析した. 呼吸状態について, 心停止での頻出単語は[呼吸],[し],[ない],[てい],[せん]に対し,死戦期呼吸では[呼吸],[口],[ない],[てい],[いる], 意識障害においては[呼吸],[し],[いる],[てい],[口]であり, 心停止と死戦期呼吸におけるピアソンの相関係数は0.88, 心停止と意識障害では0.84と高い相関を示した. また, 特徴語の指標して, IF-IDFを算出した. 心停止および意識障害においては特徴語は存在せず, 死戦期呼吸では[時々]が特徴語であった. さらに, Bigramによる解析によりIF-IDFを算出した結果, 心停止においては[ないよう],[てない], 死戦期呼吸では[時々口],[大きく]が特徴的な表現であった. これらの結果から, 言語処理的分析においては従来心停止と判断しづらいとされている死戦期呼吸は, 特徴的な表現があると考えられる. 今後さらなる分析を進めることにより, 日本語に対応した独自の心停止認識のための問診プロトコルの開発が可能となるかもしれない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の最終的な目的は,通信指令員が心停止を認識するための具体的な質問内容の提案であった. 現在, 自然言語分析を進めており, 形態素解析, ストップワードの削除, 言語レベルの相関分析およびTF-IDF法による特徴語分析, また, BigramによるTF-IDF法の分析が完了している. 結果より,心停止の判断に影響しそうな単語や文言の目星はついているものの, 見積もっていたサンプル数では, まだノイズが大きく明確ではないことが明らかとなった. 今後さらにサンプルを集め, 特徴的表現を明らかにし質問内容の検討まで行う予定である. 現在の解析段階までを日本臨床救急医学会にて発表(オンライン)予定である.
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