本研究の全体構想は,認知症高齢者の問題行動(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia: BPSD)を行動学的指標のみならず,神経生理学的指標を用いて評価し,前向き研究手法を用いて長期間の非薬物療法介入による問題行動(BPSD)の緩和効果を検証し,その効果に関連する神経生理学的要因を明らかにするものであった。本研究では,コミュニケーションロボットを用いたロボット介在活動(Robot Assisted Activity: RAA)を,非薬物療法として用いた。令和元年度は,認知症高齢者10名に対して薬物療法介入を用いた12週間の長期介入を実施し,介入の前後で行動学的指標・神経生理学的指標を測定した。また地域在住の健常高齢者20名を対象に,単回介入前後の神経生理学的指標を測定し,認知症高齢者のデータと比較することで,認知症高齢者における非薬物療法の即時効果や反応特性を検証した。長期介入の結果から,認知症高齢者において,非薬物療法が問題行動を抑制する効果は認められなかったが,神経生理学的指標の結果から精神的リラックス状態をもたらすことが示唆された。また,認知症高齢者と健常高齢者における,非薬物療法の即時効果の検討結果から,認知症高齢者ではRAAによるpositiveな効果を得にくい可能性が示唆された。令和元年度の研究成果について,国内学会にて4演題を発表し,学会報告集に論文1本が掲載された。なお現在,国内雑誌に論文を1本投稿中(採択済み)である。
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