東日本大震災発生後9年目に入る現在においても継続している心理社会的問題の解決のための支援について検討を行った。 一つは、東日本大震災の経験に基づいて東北大学災害研・災害と健康プロジェクトユニットで作られた災害医学冊子「被災後ケア(ココロとカラダを回復させる10のこと)」を都道府県庁、市町村役所、NPO法人に配布し、満足度調査を行った。災害の備えの一つとして、各所で災害関連の冊子は作成されているが、その理解のしやすさなどを評価した例はなく、本研究によりより実際に役立つ災害準備が可能になると考えられる。本研究の実績は、現在、論文を作成している。 またもう一つは、東日本大震災後1~3年目に高校生を対象にして研究を行ったデータについて再分析を行い、生活習慣によって心理社会的問題の改善ができないかという検討を行った。これは最初に、これまでの児童青年を対象にした災害と心理社会的問題と身体活動について文献レビューを行い、投稿した。そのうえで、東日本大震災後1~3年目の高校生の心理状態についてのデータと、外遊び、TV視聴時間、電子ゲーム時間、朝食摂取の有無などの生活習慣との相関を調べた。高校が3高校であり、それぞれの高校の被災状況や学習環境が異なること等から高い相関係数は認められないものの、外遊びが心理状態の改善につながる可能性が示された。本研究結果は2020年2月20~22日に開催された日本災害医学学会総会・学術集会(神戸)で発表(口演31 自然災害に被災した高校生の心理状態改善に向けた生活習慣の検討)し、現在論文化している。 以上のように本研究は東日本大震災のような大災害に備え、また心理社会的問題の解決のための一助となる結果を得た。
|