本研究の目的は、申請者の施設で死後冠動脈造影検査を実施した症例において、画像所見と病理組織学的所見を集積し、それぞれの所見の対比を十分に検討することで、死後冠動脈造影検査の有効性や更なる死後冠動脈造影検査の適応疾患の拡大について検討することであった。さらに、死後冠動脈造影法の改良を探索した上で、死後冠動脈造影検査の新たな利用法を考案することであった。 死後冠動脈造影検査を実施した症例で、病理組織学的検索のみでは困難な部位の血栓塞栓を発見することが可能であった事例や、冠動脈解離の所見を発見することが可能であった事例を経験し、関係学会等で発表することができた。 また、法医解剖においては死後変化が進行した事例も対象になるが、そのような事例において、死後変化によって肉眼による解剖所見の評価が困難である場合が存在するが、その際に死後冠動脈造影検査を実施することで、冠動脈の狭窄所見を容易に描出することが可能であり、死因究明に有用な検査であることが実証できた。 さらに、以前は冠動脈の石灰化と内腔に満たされた造影剤とを画像上識別困難であることがあったが、造影剤の構成成分の比率を調整することによって、それらを明瞭に区別することが可能となり、より一層の診断精度向上につながった。 現在は、死後冠動脈造影検査を実施した事例に加えて、過去に申請者の施設で冠動脈造影検査を実施した症例に関して、後ろ向き検討を実施することで、死後冠動脈造影検査の法医診断への有用性について更なる検討を行っている。また、造影剤の種類や造影方法に関して更なる検討を行い、より信頼度の高い検査にすることを目標としている。
|