本研究は開始当初から、自治体等とともに関係性構築をしながらデータの収集を行ってきた。分析内容が要介護度が低いまま生涯を閉じる「ぴんぴんころり」の要因分析であったため、要介護状態になる前の状態から追跡し、その後の介護、医療受給状況を突合することが必然的に研究の最初のプロセスとなった。 しかし、研究を進める中で、現在自治体が保有するデータでは、経年で要介護度の変遷と、要介護状態になる前の元気高齢者のデータ、さらには医療受給データを突合することが不可能であることが判明した。具体的には、要介護度の変遷は時間をかければ介護保険のレセプトデータから構築することはできるものの、突合キーとしては介護保険の被保険者番号のみとなる。国保データベース(以下、KDB)は主に医療費の給付を目的として構築されているため、国保の被保険者番号はすべて揃っているものの、介護の被保険者番号は給付を受けている者の番号しか反映されず、元気高齢者は介護保険の被保険者番号を持っていても反映されないことが判明した。また、KDBの中にも要介護度が一部反映はされているものの、現状の要介護度しか表示されず、過去の変遷は残らないため、膨大な過去の月ごとCSVデータを保存し、後から突合して追跡する必要があった。これは自治体のサーバー、パソコンのハードディスク容量からは不可能であった。 したがって、本研究が目的とした、元気高齢者の状態からその後の介護、医療の受給状況を追跡し、元気高齢者の時点でどのような個人要因、地域要因に着目して介入すれば要介護度の変遷を緩やかにすることができるのか、については具体的な検証作業を行うことができなかった。スタートアップとしてデータ構築を行い、その後の大規模研究につなげることを想定していたが、まずは学術論文ではなく、日本のデータ構造の課題について本の一部として発表することが本研究の成果となった。
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