本研究は、母子分離の有無による母親のオキシトシンレベルと子どもへの愛着形成について比較検証を行う目的である。 当初の研究計画では、①血中オキシトシン濃度の測定方法の検討、②産後の母親のオキシトシンの動態に関する調査、③母子分離の母親のオキシトシンレベルと愛着形成に関する検討(母児同室を行っている母親との比較)の3段階を予定していたが、①の段階において、より侵襲性の低い唾液での比較検証を行うことを2018年度に追加した。 2019年度は、第2段階として、産後の母親の血中および唾液中オキシトシンレベルの動態に関する実態調査を行った。医療機関の協力のもと、産後1か月、3か月、6か月、1年の期間における母親の授乳前、授乳中、授乳後の血中および唾液中のオキシトシンレベルを測定、検証を行った。その結果、各時期間のオキシトシンレベルの有意差は認めなかった。また、授乳中においては、これまでの先行研究同様オキシトシンレベルの上昇を認めた。さらに血液および唾液との有意な相関を認めたことより、より侵襲性の低い唾液での応用の可能性が示唆された。また、授乳中にオキシトシンレベルの上昇が認められない母親においては、EPDS、STAI(特性不安)の得点が有意に高い事が明らかとなった。 本研究の主要な目的である、③母子分離の母親のオキシトシンレベルと愛着形成に関する検討(母児同室を行っている母親との比較)については、協力機関と検討を重ねた結果、対象者への倫理的配慮より実施しない事とした。
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