研究課題/領域番号 |
18H06371
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長瀬 亜岐 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 寄附講座助教 (90381780)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | レビー小体型認知症 / 身体表現性障害 / 口腔セネストパチー |
研究実績の概要 |
レビー小体型認知症において身体表現性障害が前駆症状であると言われている中で、口腔セネストパチーによるものも散見する。そこで、本年度はプレテストとして精神科医・認知症専門医から、口腔セネストパチーにおける治療経験とその症状、年齢・性別について聴取した。 症例1:80歳代女性。主訴は歯の間から虫がでてくる。抗精神病薬を少量投与したところ、錐体外路症状が出現したため、DLBを疑いMIBG・DAT検査を実施した。食欲が低下し、食事摂取困難となり、末梢点滴治療を開始しならびにこう認知症薬を開始したところ症状が改善した。症例2:70歳代女性。主訴は砂が口の中でジャリジャリしている。うつ病と診断し、抗うつ薬を開始したところイライラが強くなり、薬剤過敏性があると判断し、DLBを疑い、DAT施行。選択的セロトニン取り込み阻害薬を少量投与したところ、口の中のジャリジャリしている感じは継続しているものの、食事摂取できるまでに改善した。症例3:70歳台女性。主訴は口の中の右半分がビリビリする、虫がいる。妄想性障害として抗精神病薬を開始。痛みの原因について心理療法を行いながら、右に限定した痛みはヘルペスが原因と夫が入院した孤立感のためであることがわかった。鎮痛剤により症状改善し、抗精神病薬も中止となった。症例4:70歳台女性。主訴は口の中が痛い。1-2年歯科通院し抜歯をするが改善なく、疼痛による二次的な抑うつ状態で精神科受診。サンドイッチしか食べられなくなっており、入院し抗精神病薬、抗うつ薬等の薬物治療を開始。症状が良くなるまでに3年かかった。 対象は全員が女性であり、うつ病や老年期妄想性障害との鑑別、また抗精神病薬を投与したときの薬剤過敏性から画像検査を追加することでDLBの診断に至っていた。また口腔セネストパチーにより抜歯や食事摂取不良があることから、対応方法について次年度は検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年9月より予定外の研究(AMED2つ、厚生労働科研2つ、Society5.0 1つ)が開始となり、当初予定していたエフォートを確保することが困難な状況にあった。文献検討ならびに事例聴取しながら、現在、倫理審査提出用の計画書を作成中である。研究計画書ができ次第倫理審査を受け、8月までには承認を得て研究を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は精神科医・認知症専門医よりプレテストとして聞き取り調査を行ったが、倫理審査を待つ間にできればDLBの診療に携わる神経内科医ならびに口腔症状を訴えるため歯科医師よりも聞き取りを行っていきたい。 準備として当教室のデータベースからDLB患者のIDを抽出した。約100名を対象として、現病歴、経過、身体表現性障害の有無、口腔セネストパチーの有無、治療内容、神経心理検査結果(NPI、MMSE)、画像からデータ収集を行う。DLBの診療を得意としている医師3名にスーパーバイズを受けながら研究を進めていく。 昨年1年間のカンファレンスでは口腔セネストパチーの症例は2例であったため、他施設の精神科医への協力を得るべきかについては実際にデータを取り始めてから検討していきたい。
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