研究実績の概要 |
目的:本研究の目的はDLB高齢者の口腔セネストパチーの実態を明らかにすることである. 方法:1)歯科医師への面接調査:診療している高齢者における口腔セネストパチーへの治療や対応ついて非構造化面接を実施し,大きく治療と連携について分類した.2)文献検討:「医学中央雑誌」WEB版で「口腔セネストパチー」「身体表現性障害」「口腔心身症」「高齢者」をキーワードとして検索を行い,研究の動向,診療科,口腔セネストパチーにおける治療の実態について精神病理学的視点から検討した. 結果・考察:1)歯科医師4名にインタビューを行った.臨床においては口腔セネストパチーを診療するケースは多いが,まずは器質的な問題がないかを歯科的に診療していくが,多くは原因がわからないことが多く,大学病院の歯科に依頼することが実際は多かった.DLBとの関連性については考慮していなかった.また、器質的な問題を探るがゆえに検査・治療が行われる過程で悪化していることも実際はあることもわかり,早期から医学と歯学の連携の必要性が示唆された。2)1983年~2020年3月までで,「口腔セネストパチー」24件,「DLB」と「身体表現性障害」20件,「認知症」「身体表現性障害」25件,「口腔心身症」「高齢者」69件の報告があった.そのうち解説を除いた症例報告・原著, 会議録でも患者像が追跡できるものを対象とした. 初期は歯科領域からの報告が多かった.治療効果のあった薬剤も抗精神病薬や抗うつ薬,抗不安薬,抗認知症薬とばらつきがあり,抗精神病薬の過敏性がある症例はDLBを疑い診療を進める症例報告もあった.口腔セネストパチーとDLBの関連は明らかにならなかったが,口腔セネストパチーの背景にある精神科的問題の専門的評価の必要性が示唆された.
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