研究課題/領域番号 |
18H06376
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
小野 寿子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50827326)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | BRCA / 遺伝性乳癌 / HBOC / 予防 |
研究実績の概要 |
curcuminはターメリックというスパイスに含まれ、がん増殖抑制効果を認める代表的な天然化合物である。一方で、curcuminががん抑制遺伝子であるBRCA1の発現を低下させるという負の側面があるという既報から、遺伝性乳癌や遺伝性卵巣癌の予防や治療の一助になる分子を探索する目的で行った。 まず既報通り、curcuminががん抑制遺伝子であるBRCA1の発現を低下させるかどうかを検討した。乳癌、卵巣癌細胞株を使用しクルクミン処理をすると、がん増殖抑制効果と共にアポトーシスや細胞周期停止を認める一方、濃度依存性にmRNAレベルでBRCA1を低下させた。 次に乳癌細胞株を使用し、ケミカルバイオロジーの手法を用いてcurcumin固定化ナノ磁性ビーズを作成し、curcumin結合タンパク質を精製・同定した。同定したタンパク質のうち、DNA修復に関与するタンパク質X、BRCA1との関連が近年報告されたRANKLに関与するという報告があるタンパク質Y、散発性乳癌の分子マーカーであるとの報告があるタンパク質Zの3つを本研究の分子候補とした。 上記候補のうち、分子Xがcurcuminの結合タンパク質であることをWestern blot法で確認した。さらに分子Xのリコンビナントタンパク質を用いた検討により、分子Xはcurcuminと直接結合していることが示唆された。次にsiRNA法にて分子Xをknockdownし、BRCA1の発現が低下するかを検討した結果、gBRCA変異陰性乳癌細胞株であるMCF-7においてmRNAレベルでBRCA1を低下させた。この結果は分子XがBRCAnessの誘導に関与している可能性を示唆している。一方、gBRCA変異陽性乳癌細胞株MDA-MB-436ではmRNAレベルでBRCA1を低下させなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitro実験では当初の予定通りBRCAnessに関与していることが示唆される分子Xが同定された。今後、分子XとBRCA1の関連について詳細メカニズムの検討を行う。 また上記研究実績の概要にて報告したようにin vitroの研究を行う一方、インターネットにつながないパソコンにて臨床データの整理を行うとともに、乳癌患者の検体サンプルの保存を行った。サンプルの集積はまだ不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、同定した分子XはBRCAnessに関与していることが示唆された。siRNA法により分子Xをknockdownしたところ、gBRCA陰性乳癌細胞株であるMCF-7においてmRNAレベルでBRCA1を低下させた一方、gBRCA変異陽性乳癌細胞株MDA-MB-436ではmRNAレベルでBRCA1を低下させなかった。今後他のgBRCA変異陽性乳癌細胞株や卵巣癌細胞株にて同様の検討を行う予定である。さらに分子XがBRCAness腫瘍の発癌に関与する分子標的になるかどうかの検討を行い、分子Xの阻害により遺伝性もしくは散発性乳癌の予防や治療に寄与できる可能性を探求する。また候補分子YやZにおいても分子Xと同様の検討を行っていく。 加えて、昨年度に引き続き乳癌患者のサンプル集積を行い、今後も臨床検体を用いたBRCAnessの誘導に関与している分子の発現について検討したいと考えている。
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