研究実績の概要 |
騒音障害防止対策の実態について、国内の71事業場から回答を得た。存在する騒音作業場としては、ガイドラインに記載の作業場がほとんどであったが、ガイドラインに記載がなくても騒音作業場としてみなしている作業場も15.3%存在していた。ほとんどの事業場が何らかの騒音障害防止対策を「実施している」と回答しており、ガイドライン制定以降、騒音対策に取り組んでいる事業場は増加してきたと考えられたが、その内容は聴覚(防音)保護具に関連する対策が主体であり音源対策は75.4%、伝播経路対策は62.3%にとどまった。騒音対策を実施していない、あるいは十分実施できていない理由としては経済的理由が最も多かった(35.3%)が、知識不足、人材不足という回答も見受けられた。また、騒音障害防止対策をおこなっている事業場から12例の好事例を得た。業種は製造業が11例で、1例は製造業の構内にある物流業であった。事業場規模(従業員数)は1,000人以上が6例、200人以上1,000人未満が5例、200人未満が1例であった。200人未満の小規模事業場からは提示した例以外には聴覚保護具以外の好事例を聴取することができなかった。健康診断(聴力検査)結果に基づく聴覚管理の実施状況として、保健指導を実施している事業場は約7割であったが、指導内容は聴覚(防音)保護具の着用指導が主体であった。聴力有所見者に対する就業の措置を実施している事業場は半数以下であった。就業上の措置や、就業判断を実施するための産業医等による有所見者に対する面談の該当基準は各事業場でばらつきがあり「全員」という回答も見られた。措置内容は騒音対策や保健指導と同様、「聴覚(防音)保護具の使用指示」が最も多かった。以上の結果からリスクアセスメントとしての作業環境測定や健康診断は実施されているものの実効的なリスクマネジメントに結び付いていないことが示唆された。
|