研究課題/領域番号 |
19K21465
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
江川 和孝 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 研究員 (10827257)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | レオウイルス / 疫学研究 / RSウイルス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、real-time PCR法を用いてオルソレオウイルス遺伝子の検出系を確立し、日本における呼吸器症状患者、消化器症状患者のオルソレオウイルス感染の実態を解明することである。 令和元年度は、平成30年度に、消化器症状を示す患者の糞便 3検体から分離した哺乳類オルソレオウイルス 3株について、S3遺伝子の一部塩基配列を決定した。NCBI BLAST検索を行なった結果、本研究で分離した哺乳類オルソレオウイルス 3株のS3遺伝子は、2014年に中国に生息するミンクから分離された哺乳類オルソレオウイルスのS3遺伝子と非常に近縁で、その塩基配列の同一性は約98%であった。 また、令和元年度は、呼吸器感染症の原因ウイルスとして大阪市内で流行しているRSウイルス(RSV)の遺伝子型やそのアミノ酸変異の特徴を明らかにすることを目的に、以下の実験を行なった。 2014年1月-2018年12月の5年間に大阪市内においてreal-time PCR法によりRSV遺伝子が検出された呼吸器由来123検体から、RSV-A 30株、RSV-B 17株のGタンパク質、およびFタンパク質のコード領域全長塩基配列を決定した。Gタンパク質を基に分子系統樹解析を行なったところ、RSV-Aの遺伝子型は、ON1型が27株(90.0%)、NA1型が3株(10.0%)で、RSV-Bの遺伝子型は、BA9型が15株(88.2%)、BA10型が2株(11.8%)であった。2014年から2018年に大阪市内で検出されたRSVの遺伝子型は、国内で流行しているRSVの遺伝子型と同様であることが明らかとなった。また、Fタンパク質のアミノ酸変異について解析したところ、RSV-A、およびRSV-Bにおいて、palivizumab(RSV感染症の重症化予防薬)に耐性が報告されているアミノ酸変異は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度は、次世代シーケンサーを用いて、平成30年度に分離した哺乳類オルソレオウイルスの全塩基配列を決定し、分子系統樹解析を行う予定であった。しかしながら、次世代シーケンサー解析に適した哺乳類オルソレオウイルスの核酸を用意することができず、次世代シーケンサー解析を行うことができなかったことから、やや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
オルソレオウイルスに関する研究では、ウイルス濃縮を行い、その溶液から核酸を抽出し、次世代シーケンサー解析を行う予定である。本研究で分離した哺乳類オルソレオウイルス 3株の全塩基配列の決定を試みる。次世代シーケンサー解析が困難だった場合、DNAシーケンサーを用いて、哺乳類オルソレオウイルスの型別に使用されるS1遺伝子の塩基配列を決定し、分子系統樹解析により型別を行う予定である。 RSウイルスに関する研究では、令和元年度に引き続き、Gタンパク質の糖鎖修飾部位やFタンパク質の抗原部位におけるアミノ酸変異について解析を行う。特異的なアミノ酸変異が認められた場合、哺乳類培養細胞を用いて呼吸器由来検体からRSウイルスの分離を行い、その性状を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンサー解析に適した哺乳類オルソレオウイルスの核酸を用意できなかったため、次世代シーケンサー解析に関する試薬の購入や次世代シーケンサー解析の外注をしなかった。そのため次年度使用額が生じた。 次世代シーケンサー解析に関する試薬の購入や、その外注費、細胞培養等に必要な消耗品購入に充てる。
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