研究実績の概要 |
2020年度の本研究成果として、まず地域とのつながりを持っている高齢者ほど、希望する最期の場所として自宅を選びやすいことが明らかになった(Ishikawa T, Haseda M, Kondo N, Kondo K, Fukui S, 2021)。次に高齢者個人の所得や教育歴の低さと、希望する療養場所の選びにくさや、自身の終末期に関して他人との話し合いを行っていないこととの関連を明らかにした(第79回公衆衛生学会にて発表、現在投稿準備中)。一方でかかりつけ医がいる高齢者や、情緒的サポートの授受がある高齢者ほど、人生の最終段階について話し合いをしている傾向があることが明らかになった(Moriki Y, Haseda M, Kondo N, Ojima T, Kondo K, Fukui S, 2020)。さらに、希望する療養場所に関する話し合いの割合に関する所得階層間格差が、かかりつけ医がいる場合にはいない場合に比べて小さい傾向にあり、かかりつけ医をもつことが、希望する療養場所・死亡場所に関する話し合いの社会階層間格差を緩和する可能性があることが明らかになった(第12回日本プライマリ・ケア連合学会にて発表予定、日野原賞候補演題に選出)。つまり本研究によって、人生の最終段階で過ごす場所の選びやすさには社会階層間格差があることが明らかになった。一方で地域とのつながりやかかりつけ医を持つことは、自身の健康を保つのみならず、自身の人生の最終段階における希望の具現化に寄与し、さらにその社会階層間格差をも縮小しうるかもしれない。
|