研究実績の概要 |
本研究によって、以下が明らかになった。 ①希望する最期の場所や話し合いの状況に関する社会階層間格差:教育歴が低い群では、希望する最期の場所が「わからない」と回答する割合が男女とも高かった。また高所得層に比べて低所得層では、希望する最期の場所の話し合いをしていない割合が高かった。最期を迎える場所として自宅を希望する割合は、所得および教育歴による差はみられなかった。 ②上記格差と関連する要因:居住する市町村によって、希望する最期の場所の種類およびその話し合いの状況にばらつきがみられた。また75歳以上の男女においてかかりつけ医がいる場合には、そうでない場合と比較して、最期を迎えたい場所を人と話し合う機会を持つ機会が多い傾向にあった(Moriki, 2021)。特に低所得でかかりつけ医のある者は中所得でかかりつけ医のない者と同程度話し合いを実施しており、話し合いの割合の所得階層間の差は、かかりつけ医がある場合に小さくなる傾向が観察された (長谷田、2021年度日本プライマリ・ケア連合学会・若手優秀研究賞受賞)。 ③地域とのつながりの強さと希望する最期の場所の関連:地域への愛着、近所づきあいなどの地域とのつながりを強く感じている人ほど自宅で最期を迎えたいと希望する傾向があった。特に病気で寝込んだ時に看病してくれる人がいる者では、そうでない者に比べて約1.7倍、最期を迎えたい場所として自宅を選択する割合が高かった(Ishikawa, 2021)。 上記結果から得られた示唆として、高齢者の人生の最終段階での過ごし方の選択を支援する際には、地域の文脈および社会背景を踏まえた情報提供などの配慮や、早くからかかりつけ医や地域のつながりなどを持つことが有用かもしれない。
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