研究課題/領域番号 |
18H06390
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
稲垣 晃子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任助教 (40800652)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 精神科リハビリテーション / 統合失調症 / 認知機能評価尺度 / 短縮版 |
研究実績の概要 |
本研究は、統合失調症認知機能簡易評価尺度(The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia;BACS)日本語版(BACS-J)について、文献検討および既存データ解析を行ってBACS-J短縮版を選定し、専門家へのフォーカス・グループ・インタビューおよび統合失調症患者への面接調査を実施して、その短縮版尺度の有効性を検討することを目的とする。 研究実施計画に則り、一年目である本年度は、まず既存の認知機能評価尺度やBACSに関する文献検討を行った。BACS短縮版に関する先行研究の結果について考察を行うことで、研究動向や本研究の位置づけについて整理することができた。さらにBACS-Jに見識のある研究者らと研究会で意見交換を行い、臨床・研究でのBACS-J短縮版使用の目的や、今後行う統合失調症患者へのインタビューの内容に関する示唆を得たことで、患者・専門家双方の視点でBACS-J短縮版の選定を行うことの重要性が再確認された。 また、日本の患者を対象とした計4件の先行研究における認知機能(BACS)等の検査結果について、各研究班からデータ使用許可を得ることができた。著作権者からBACS-Jキットの購入および研究使用に関するライセンス契約を行って研究使用の許諾を得るとともに、BACSの日本語版翻訳・作成を行った研究者から本研究に関して了承を得た。研究実施については、所属研究機関の倫理委員会による審査・承認を得た。 予備解析として一部データによるBACS-J得点に関する相関分析等を実施し、先行研究と比較検討した結果について共同発表者らと議論を深め、その考察を踏まえて学会発表を行った。 現在、共同研究機関の倫理委員会に審査申請を行っており、承認後に、データが帰属する各研究機関との情報の授受の手続きを進め、全データを用いた本解析を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画において、本年度は、①既存の認知機能評価尺度やBACSに関する文献検討を行う。②BACS-Jの既存データの解析を実施して先行研究との比較検討を行い、BACS-J短縮版を選定する。③BACS検査の経験が豊富な専門家(精神科医・臨床心理士ら)へのフォーカス・グループ・インタビューを行い、これらの知見を踏まえてデータ解析結果を検討し、BACS-J短縮版を提案することを予定していた。 全データを用いた本解析に関しては、共同研究機関の倫理委員会における審査・承認を待っている段階であり実施に至っていないため、BACS-J短縮版の選定および専門家へのフォーカス・グループ・インタビューまでは進捗していないが、予備解析の結果を踏まえた共同研究者との意見交換によりインタビューガイドを作成し、インタビュー協力への内諾を得ることができた。所属研究機関の倫理委員会による承認を受け、インタビューに係る準備作業を進めている。 また、文献検討によってBACS短縮版に関する研究動向や本研究の位置づけや本尺度の使用目的についても整理するとともに、先行研究に基づいた予備解析によって追加の解析手法の検討や、本年度の研究成果を中間報告として学会発表を行うなど、全体としておおむね順調に進展しており、引き続き研究実施計画に沿って遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度は、使用許可を得た認知機能(BACS)等の検査データについて、データが帰属する各共同研究機関の倫理委員会の承認および情報の授受に関する手続き後に、本解析を実施する。これらの既存データ解析から得られた結果をもとに、BACS-J短縮版の提案について、BACS-J検査の経験が豊富な専門家を対象にフォーカス・グループ・インタビューを行い、BACS-J短縮版とする検査項目を選定する。その後、作成したBACS-J短縮版を用いて、統合失調症患者を対象に認知機能評価およびヒアリングを含む面接調査を行い、選定した検査項目の所要時間や精度に関する検討や、当事者の負担感などについても検討を行う。 フォーカス・グループ・インタビューおよび面接調査に関しては、所属研究機関の倫理委員会の承認を得ており、共同研究機関の倫理委員会にも審査申請を行っているところである。研究参加者への依頼については、協力施設の担当者に対象者の選定を依頼し、対象者本人に説明文書を用いて研究内容の説明を行い、書面にて同意を取得する。 専門家へのフォーカス・グループ・インタビューおよび統合失調症患者への面接調査から得られた知見を裏付けとして、データ解析結果をさらに検討して考察を深め、BACS-J短縮版として選定する検査項目に関する結果を取りまとめて、学会発表および論文発表を行う。
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