研究実績の概要 |
本研究は、中小企業を対象とした保険者のレセプトデータ及び健診データを使用し、①禁煙維持と所得・職種との関連、②禁煙維持と生活習慣の関連、③禁煙維持とニコチン依存症治療の有無との関連を明らかにすることを目的に実施した。2018年度は、385,945名の喫煙率について、性別、年齢、所得、業態別に評価し、業態による健康格差が顕著であることが明らかとなった。 2019年度は、2012年度から2014年度のデータを使用し、禁煙維持の要因について分析を行った。対象である禁煙者は4,034名で、2014年度時点で禁煙を維持している者は69.6%であった。禁煙維持について、職種や所得、生活習慣による有意差は認められなかった。また、性別、年齢、ニコチン依存症治療の有無については有意差が認められた。禁煙を維持していくことは困難であり、周囲のサポートが必要となる。ニコチン依存症治療と他の禁煙方法の違いは、治療薬による影響だけではなく、医師や看護師等のサポートが得られることである。そのため、治療後であってもサポートがある環境を整えることが必要であると考えられる。 また、禁煙維持の要因としてニコチン依存症治療との関連が認められたため、治療で最もよく使われているバレニクリン酒石酸塩について、その費用対効果について分析した。実際に支払われた医療費と薬剤費を算出し、非治療禁煙群に対し、バニクリン使用禁煙群における禁煙維持者1人増分にかかる増分費用効果費を評価したところ、1年より2年の禁煙、女性より男性、40歳以上より40歳未満で費用効果が優れていることが明らかとなった。
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