研究課題/領域番号 |
18H06394
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
柏崎 郁子 横浜市立大学, 医学部, 助教 (90826702)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 特別養護老人ホーム / 看護 / Advance Care Planning / 意思決定 / 質的調査 |
研究実績の概要 |
【具体的内容】今年度は、厚労省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」とAdvance Care Planning(以下ACP)に関する文献検討を行いこれを和文誌に投稿した。また、現代日本における医療・介護政策・制度と個人の意思決定の関連についての論考をまとめた。これを別の和文誌に投稿準備中である。文献検討の結果を学会発表すべく準備中である。 【意義・重要性】厚労省では、2018年改訂版「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」にACPの概念を盛り込んでいる。特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)(以下「特養」)は、特に介護度の高い高齢者の「終の棲家」としての機能が期待され、特養での死亡割合は増加傾向にあるなか、医師が普段は不在である施設が多数を占め、看護職は介護職員を介して間接的に利用者の身体状況を把握していく専門性が問われること、高齢者は特に終末期の判断が難しいため、看護職は高度な医学的判断をもとに ACPのタイミングや内容を判断する必要があるという背景がある。そのため、特養看護職のACPプロセスにおける関わりの実態を把握し、ACPにおける看護職の役割を明確にすることは重要である。「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が2018年改訂で医療のみならず介護における意思決定も視野に入れたことを受け、現代日本における医療・介護政策・制度と個人の意思決定の関連についての文献検討と、ACPの利点と難点、課題についての文献検討では、今後の特養でのACPプロセスにおける看護職の具体的な実践内容把握と、看護職を対象としたインタビュー調査、その分析の実行に向け重要な示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
厚労省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に関連した文献検討では、ガイドライン策定に至る経緯と2018年に行われた改訂の内容を分析すると同時に、「安楽死・尊厳死」に関わるもの、「自己決定論」に関わるもの、「医学的無益性」に関わるもの、「生権力論」や「医学史・科学史」の視座からの先行研究を分析した結果、「人生の最終段階」の対象者が医療の対象者とは限らない状況や、ACPの現状に関する調査がまだ少ないこと、また、自己決定を基本としたガイドラインの考え方を踏襲することによってむしろ医学的無益性を根拠とした医療行為の不開始と中止が選択されやすくなる可能性もあることが明らかになった。初年度予定していた文献検討は順調に進んでおり、また、調査対象施設の選定も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、国内外の文献を通じたレビューと、実際に行われている特養でのACPの実態をフィールドワークにて具体的に把握したことを基に帰納的に分析し、その結果を基に複数施設でのインタビューを通じて演繹的に確認することを予定している。特養におけるACPでは、どのようなタイミングで、どのようなメンバーで、何について話し合いが行われているのか実態を明らかにするため、ACPの概念に則った支援を行っている特養での事例検討会に参加し、それぞれの事例からACPプロセスにおける具体的な実践を把握する。対象施設は、看取り介護加算の算定をしており、事前指示の確認を入所時以外に複数回行っている施設とする。文献検討とフィールドワークの成果をもとに、具体的場面・プロセスに即して、社会システム、医療介護チーム、家族、利用者それぞれにあらわれるACPの内容や効果、課題をリストアップする。それに基づき、研究目的に沿ったインタビューガイドを作成する。作成したインタビューガイドに沿って対象施設の看護職を対象にインタビュー調査を実施し、結果を質的に分析する。結果の分析の際には、看護学研究者、人文系研究者双方と意見交換し、特養看護職のACPにおける役割や教育を検討し論文化、発表する。
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