【具体的内容】今年度は、厚労省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」とAdvance Care Planning(以下、ACP)に関して、現代日本における医療・介護政策・制度と個人の意思決定の関連についての論考をまとめた。これを和文誌に投稿査読中である。また、特別養護老人ホーム(以下、特養)に赴き、看護職へのシャードイングとインタビュー調査を実施した。現代日本における医療・介護政策・制度と個人の意思決定の関連についての論考で得られた倫理学的・医療社会学的背景に関する知見をベースに、特養でのACPプロセスにおける看護職の具体的な実践内容把握と、看護職を対象としたインタビュー結果を分析している。 【意義・重要性】厚労省では、2018年改訂版「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」にACPの概念を盛り込んでいる。また、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が2018年改訂で医療のみならず介護における意思決定も視野に入れたことを受け、介護施設におけるACPの可能性について考察することの重要性が増している。特養は、特に介護度の高い高齢者の「終の棲家」としての機能が期待され、特養での死亡割合は増加傾向にあるなか、医師が普段は不在である施設が多数を占め、看護職は介護職員を介して間接的に利用者の身体状況を把握していく専門性が問われること、高齢者は特に終末期の判断が難しいため、看護職は高度な医学的判断をもとにACPのタイミングや内容を判断する必要があるという背景がある。そのため、特養看護職のACPプロセスにおける関わりの実態を把握し、ACPにおける看護職の役割を明確にすることは重要である。
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