本研究では救急受診患者に対する電子カルテのコード化とデータの抽出・蓄積を効率よく行うシステムの開発を行い、救急受診患者の網羅的なデータベース作成を行うことによって、救急受診患者の実態調査・及び救急診療の質向上のための臨床研究へとつなげることを目的としている。 昨年度の時点で救急受診患者のカルテフォーマットの安定した登録が行われた。その中には旅行者といった地域特有の救急患者の実態も把握可能となったり、また救急室滞在時間の延長の原因のひとつとなり得る、付添のない単独来院などの項目も安定して抽出できるようになっており、救急診療の地域性、また日本独自の状況把握が可能となった。 最終年度である本年度は、特定の病態(心停止)のフォーマットに入力を行い、参加中の院外心停止に関する多施設共同研究のデータ入力も飛躍的に効率化している。また、既往歴や内服歴を含めたテキストデータの安定した抽出システム、救急車来院症例の病院前データ登録の効率化に関して、外注し、導入した。これにより病院前情報を含み、また標準コード化された内服薬や既往歴を含んだデータベース構築が可能となっている。 今後入院患者に関してはDPCデータとの結合により縦断的なコホート作成を行ったり、予定外再診患者や救急滞在時間に関するデータベース構築・解析を行い救急診療の質評価および改善に役立つ情報を生み出す。さらには、同システムや他の類似システム導入により救急診療データベース構築が容易になった他の施設と多施設共同研究を行い、日本における救急診療の質評価・改善に寄与することを次の目標とする。
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