本研究の目的は、医学部の卒前教育における研究倫理教育の現状把握と研究倫理教育のゴール設定やニーズを把握すること、および、研究倫理教育の効果を測定するためのツールとして倫理的感受性尺度を開発することであった。 国内の医学部における研究倫理教育の調査は2018年に終え、2022年にCBEL Reportにて結果を公表した。この研究は日本の医学部を対象とした悉皆調査であり、回収率28%、有効回答率24%と低かったものの、最も教育されていたのは、大きな3つの領域分類では「被験者保護」で、34教育項目の中では「研究における不正行為」であったという結果が得られた。教育手法については、学年が上がると事例検討も多く取り入れられていたことを把握できた。また、研究倫理教育のゴールとしては「科学者としての倫理的態度」のような抽象度の高いものから「研究計画書の作成」のような具体的なものまで、設定された目標には幅があった。さらに、教育教材のニーズや他の教員の協力を求める声が多いことも把握することができた。 評価ツールの開発については、医学系研究を対象とした倫理的感受性尺度の開発に取り組んだが、進展しなかった。日本学術振興会のグリーンブックを参考に、日本の研究者が遭遇しうる倫理的な課題を含む場面のシナリオを複数作成することを試みていたが、場面の絞り込みに至らなかった。また、先行研究を参考に、感受性の深度の違いをレベル0~3に分け、シナリオに対する回答がどのレベルの倫理的感受性の深度にあるのかを同定する予定であったが、具体的な討論には至らず、公表できるプロダクトを作成することができなかった。
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