本研究は、牛肉、豚肉および鶏肉のマーカーとなる各タンパク質に対するモノクローナル抗体を活用し、これらを同時に識別定量できる新規イムノセンサの構築を目指している。本年度(最終年度)は、これまでに得られた牛肉、豚肉および鶏肉に対するモノクローナル抗体8種類及び市販抗体6種類を表面プラズモン共鳴(SPR)測定装置に適用することにより、イムノセンサの構築を試みた。センサチップはあらかじめNHSエステルが修飾されたものを使用した。センサチップへ抗体を固定化する際の抗体濃度を検討した結果、本研究では1 mg/mLが適していると考えられた。構築したイムノセンサにおいて5種類のモノクローナル抗体が各々異なる反応性で牛肉、豚肉および鶏肉のタンパク質に反応した。これら5種類の抗体を用いることで、牛肉、豚肉および鶏肉を同時に判別できると考えられる。構築したイムノセンサの豚肉のマーカーとしたタンパク質の定量範囲は約10~1000 ng/mLであり、従来法のサンドイッチELISAの感度と同程度であった。 本研究全体を通して、牛肉、豚肉および鶏肉のマーカーとしたタンパク質に対するモノクローナル抗体が得られた。また、得られた抗体を用いて、既存の測定法と比べより実用的な豚肉測定法となるサンドイッチELISAを構築した。従来、食肉偽装対策や原材料表示を監視するために食品中の豚肉量を測定するイムノアッセイがいくつか開発されているが、食品の調理・加工によるタンパク質の変性や抽出効率の低下の影響を受けるため、正確な測定が困難だった。本研究で構築したサンドイッチELISAでは、従来法では困難とされている加熱(加工)された食品に含まれるマーカータンパク質の定量が可能となった。また、得られた抗体をSPR測定装置に適用し、牛肉、豚肉および鶏肉を同時に判別可能なイムノセンサを構築した。
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