2009年の新型インフルエンザH1N1pdm09ウイルスの出現による世界的な大流行では、患者の多くは若年者において発症し、高齢者ではその発症は少なかったとされている。しかしながら、どの年齢階級がどの程度の免疫を有し、それが感染阻止にどれだけ役立っているのかを調べた研究は限られている。 本研究では、大阪府において、2009年インフルエンザパンデミックの前後で採取された冷凍保存ペア血清を用い、年齢階級毎に4グループ(①1970年以降、②1960-1969年、③1950-1959年、④1949年以前)に分け、それぞれの出生年階級でのインフルエンザウイルスに対する中和抗体を測定した。チャレンジウイルスにはパンデミック前のワクチン株であるブリスベン株、H1N1pdm09ウイルスに対する中和抗体化を測定するためにカリフォルニア株を用いた。パンデミック前と直後の抗体価の比較で4倍以上の上昇を感染と定義し、H1N1pdmウイルスに対する流行前の中和抗体の保有率、及び流行直後の感染率を算定した。 研究では、男性141名、女性100名が参加し、2009年(流行前)の新型インフルエンザ株に対する抗体保有者はの割合は3.3%で、出生年間で有意な差は認められなかった。2010年(流行後)は年齢階級毎では、①7.9%、②8.7%、③10.9%、④34.3%で有意な差が認められた。感染率については、ブリスベン株において中和抗体20倍以上で5.3%、40倍以上で1.3%、カリフォルニア株において中和抗体20倍以上で12.5%、40倍以上で0.0%であった。 2009年パンデミックでは、大阪府でも若年者は高齢者よりも高い感染率を示すことが明らかになった。また中和抗体を40倍以上有していればウイルスにはほぼ感染しないと推測された。
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