研究実績の概要 |
静止立位は姿勢保持のための繊細な筋トーヌスの調整を要する動的なプロセスであり、X線撮像の一瞬間を切り出した画像から得られる情報は限定的である。モーションキャプチャーおよび床反力計を用いた3次元的動作解析を行うことで、体表マーカーの位置から推定された下肢関節(股関節・膝関節・足関節)の角度、重心位置を反映すると考えられる圧力中心center of pressure(COP)の偏位による動揺指標、さらに各関節にかかる力学的モーメント、パワーなど、従来の画像検査では得られなかった動的な情報の解析が可能になる。 そこで本研究では、脊柱変形患者の矯正術前後に3次元的動作解析を行い、これらのデータを健常者の基準値と比較することで、手術によってどの関節に対する負荷がどの程度改善するのかを具体的に明らかにする。また、従来提唱されてきた矯正目標の達成度と、実際に生体力学的に得られた変化の相関を調査し、最も低侵襲に最大の効果をもたらす矯正の目標値を明らかにすることが本研究の目的である。 東京大学医学部附属病院リハビリテーション室に設置された赤外線カメラによるモーションキャプチャーシステムおよび床反力計(動作分析装置MA-3000、アニマ株式会社)を用いて、1分間の静止立位などの単純動作を行わせた場合の重心動揺指標や、骨盤を含めた下肢各関節にかかるモーメントの変化を計測した。 初めにpilot studyとして健常者ボランティアを8名募り参加を依頼し、静止立位1分間および椅子からの立ち上がり動作での動揺の程度と下肢関節にかかるモーメントの基準値を計測した。 しかし最も重要な股関節モーメントについてはICC(2,1)=0.56と検者間信頼性が低く、再現性において良好な結果を得ることができなかった。
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