研究課題
機能障害を起こした細胞から遊離するDAMPS(ダメージ関連分子パターン)を介した、マクロファージの自然免疫機構の活性化は、慢性炎症疾患の病態として重要である。またインスリン抵抗性の発現には、脂肪組織におけるマクロファージを中心とした慢性炎症が中心的な役割を果たしている。DAMPsのうち自己由来の遊離核酸断片は、病原体センサーのひとつであるToll-like receptor(TLR)9により認識され、慢性炎症を惹起することから、インスリン抵抗性との関係が示唆されている。しかしながら、脂肪組織の炎症における遊離核酸断片の分解と認識に関わる自然免疫機構の詳細は不明である。本研究では、脂肪組織の慢性炎症とDNA分解機構の関連性を検討することを目的とした。マクロファージ活性化におけるDNase IIの役割について検討を行った。マウスマクロファージ由来細胞株RAW264.7細胞を飽和脂肪酸やTLRアゴニストを用いて刺激することで、MCP-1, TNF-a, IL-1bなどの炎症性分子のmRNA発現が上昇した。一方で、細胞質分画におけるDNase II活性はコントロール(未刺激)に比べて、それらの刺激による変化はみられなかった。今後は、炎症を惹起しうる脂肪細胞培養上清などの種々の培養条件下におけるマクロファージDNase IIへの影響を検討し、それらの条件下におけるシグナル伝達機構を解析する予定である。また、in vivoにおいて脂肪組織のDNase活性と遊離核酸断片蓄積の関係性を明らかにするため、マウスを用いた解析を行う予定である。
3: やや遅れている
平成30年度は、in vitroの検討を行った。さらにTLR9アゴニストや脂肪細胞由来の分子などマクロファージを刺激しうる種々の条件下における核酸分解機構への影響について検討することが必要と考えられた。しかしながら、学部開設年度ということもあり、使用を予定していた機器備品の設置場所及び調整に時間を要した。実験開始時期の変更により、当初の実験計画よりやや遅れていると判断した。
今後は、当初予定していた脂肪細胞培養上清などの種々の培養条件下におけるマクロファージDNase IIへの影響を検討することとした。さらにそれらの条件下におけるシグナル伝達機構を解析する予定である。また、in vivoにおいて脂肪組織のDNase活性と遊離核酸断片蓄積の関係性を明らかにするため、肥満モデルマウスを用いた解析を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Journal of the American Heart Association
巻: 8 ページ: e010860
10.1161/JAHA.118.010860
Frontiers in Cardiovascular Medicine
巻: 5 ページ: 144
10.3389/fcvm.2018.00144