研究課題
機能障害を起こした細胞から遊離するDAMPS(ダメージ関連分子パターン)を介した、マクロファージの自然免疫機構の活性化は、慢性炎症疾患の病態として重要である。インスリン抵抗性の発現には、脂肪組織におけるマクロファージを中心とした慢性炎症が中心的な役割を果たしている。本研究では、肥満においてDAMPSのひとつである遊離核酸断片の分解機構が脂肪組織のインスリン抵抗性に与える影響を検証した。マウスマクロファージ細胞株RAW264.7細胞を飽和脂肪酸やTLRアゴニストを用いて刺激することで、MCP-1, TNF-a, IL-1bなどの炎症性分子の遺伝子発現が増加した。マウス腹腔内マクロファージを用いた実験においても同様の結果が得られた。一方で、細胞質分画における核酸分解酵素DNase II活性はコントロール(未刺激)に比べて、それらの刺激による変化はみられなかった。次に食事誘導性肥満マウスを用いて、肥満脂肪組織のDNase II活性と遊離核酸断片蓄積の関係性を検証した。食事誘導性肥満マウスは、通常食マウスに比較して、空腹時血糖が上昇し、インスリン抵抗性が生じるとともに、脂肪組織におけるMCP-1, TNF-a, IL-1bなどの炎症性物質の発現が上昇し、マクロファージ浸潤が増加した。また、DNase IIの発現が増加することが明らかになった。これらのことから、肥満において脂肪組織における核酸分解機構は、脂肪組織の慢性炎症とインスリン抵抗性に影響を与えることが示唆された。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Journal of the American Heart Association
巻: 8 ページ: e010860
10.1161/JAHA.118.010860