本研究では,過去6年間に三次元動作解析装置で計測した歩行動作(28519試行)を後方視的に分析し,計測中に転倒しそうになって介助を要した36人(43試行)について,転倒の方向とその理由を重心の動き・関節角度変化などから分類した。麻痺側前方へ転倒する患者が最も多く,転倒の方向としては5パターン,転倒の機序は7パターンに分類することができた。具体的には,非麻痺足を内側に接地して継足状態となり,麻痺側前方に倒れる継足型が12人,麻痺足を振り出そうとした際に膝が屈曲せずにつま先が引っ掛かり麻痺側前方へ倒れる引っ掛かり型が6人,膝折れ型が2人,麻痺側股関節が内転して側方へ流れる横流れ型が6人,非麻痺側を大きく振り上げることで屈曲姿勢が増悪して麻痺側後方へ倒れる屈曲型が6人,麻痺側足関節の背屈制限により立脚期に重心が非麻痺側後方へ押し戻される逆戻り型が3人,あらゆる方向へ倒れる失調型が1人であった。
その結果は国際リハビリテーション医学会(13th International Society of Physical and Rehabilitation Medicine World Congress)で発表し,最優秀ポスター賞(1st Place Poster Presentation Award)を受賞した。
その後さらに解析を進め,転倒の1歩行周期前の各種運動学的・運動力学的指標について,通常時の歩行周期と比較した。これによって,転倒の1歩行周期前に生じる,転倒の初期異常についてを分析することができた。結果については,現在論文投稿中である。なお本年度の基金はそれら研究データの解析に必要な備品購入と論文の英文校正等に使用した。 以上の結果は,片麻痺患者の転倒のメカニズムを理解する貴重な内容であり,患者の転倒予防のための介助位置の検討,評価・治療内容の検討に貢献することができると考える。
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