研究課題/領域番号 |
18H06440
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
多々納 詩織 (福田フクダ) 島根県立大学, 看護栄養学部, 助教 (50825198)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | FGF23 / klotho / 妊娠期 / リン / エピゲノム |
研究実績の概要 |
本研究は、近年増加傾向にある慢性腎臓病について、妊娠期の過剰なリン摂取が新生児の発育やエピゲノム変化に及ぼす影響を明らかにし、胎児期から将来の慢性腎臓病発症を予防する新しい栄養管理法の確立を目指すものである。当該目的を達成するために、妊娠期の過剰なリン摂取が新生児の発育やリン・ビタミンD代謝に及ぼす影響を明らかにすることを試みた。その結果、妊娠期に高リン食を投与した母マウスから生まれた新生児マウスの3週齢時点において、尿中リン排泄量の有意な減少が確認された。このことから、新生児は体内にリンが貯留しやすい変化が生じていることが考えられ、将来的に血中リン濃度の上昇や腎機能低下を引き起こす可能性が考えられる。一方、成長期マウスに高リン食を投与することで発現低下を認めた腎臓のα-klotho遺伝子については、有意な変化を確認することができなかった。このことから、ライフステージごとで高リン食投与がリン・ビタミンD代謝に及ぼす影響が異なることが示唆され、改めてライフステージごとのリン摂取管理の重要性が示された。母乳中のリン濃度は、妊娠期の高リン食投与による影響を受けていないことを確認したため、新生児マウスに何らかのエピゲノム変化が生じていることが予想された。「腎臓」と「骨」において、リン・ビタミンD代謝関連遺伝子のmRNA解析を行ったが、有意な変化は確認できなかった。現在、「腎臓」「骨」以外の標的臓器にも焦点を当て、エピゲノム変化の標的因子を明らかにするために検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、妊娠期の過剰なリン摂取が新生児の発育やリン・ビタミンD代謝、エピゲノム変化に及ぼす影響を明らかにすることを目指していた。リン・ビタミンD代謝に及ぼす影響について、いくつかの遺伝子発現の違いを見出すことができ、エピゲノム変化の関与を示唆することはできたが、エピゲノム変化の標的因子を同定するには至らなかった。以上のことを総合して、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
妊娠期の過剰なリン摂取が、新生児のリン代謝異常を引き起こし、その背景にエピゲノム変化が関与していることを明らかにした。今後は、エピゲノム変化の標的因子を検討するとともに、胎児期に受けた過剰なリン摂取の影響によるエピゲノム変化が、離乳直後の成長期の過剰なリン摂取における反応性に及ぼす影響を検証する。
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