本研究では,血液透析患者における血液透析中の至適平均除水速度(ultrafiltration rate)を推定することを目的とした.1年以上安定して血液透析を受けている透析患者707名を対象とし,非糖尿病性腎症患者と糖尿病性腎症患者の総死亡率に対する平均除水速度の影響を遡及的に評価した.非糖尿病性腎症患者群と糖尿病性腎症患者群の年齢,性別,BMI(Body Mass Index),透析期間,透析時間,心血管病変の有無,透析間体重増加量,除水量,除水速度,%クレアチニン産生速度,GNRI(geriatric nutritional risk index),血清アルブミン濃度およびKt/Vを目的変数とし,多変量解析を用いて血液透析患者の死亡に関連する因子を探索した.次に,ROC曲線解析と生存分析の結果から,死亡率に対する平均除水速度のカットオフUFR値を推定した. 本研究の結果,血液透析患者における総死亡の独立した危険因子は,透析間体重増加量,除水速度,GNRI,年齢であった.非糖尿病性腎症患者群と糖尿病性腎症患者群のGNRIと年齢で調整したカットオフUFR値は,それぞれ12.07 mL/hr/kgと9.66 mL/hr/kgであった.生存率については,非糖尿病性腎症患者群では,UFR <12.07 mL/hr/kgの患者の7年生存率は72.6%であった.また,UFR ≧12.07 mL/hr/kgの患者の7年生存率は19.6%であった.糖尿病性腎症患者群では,UFR <9.66mL/hr/kgの患者の7年生存率は66.7%であった.また,UFR ≧9.66 mL/hr/kgの患者の7年生存率は33.4%であった.本研究の結果,血液透析患者の死亡にはUFRが関連していることが分かった.また,至適UFRは非糖尿病性腎症患者群と糖尿病性腎症患者で異なることが示唆された.
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