研究課題
本研究は、安価で可搬性に優れる小型センサを用いて人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty: TKA)術後患者の歩行動作を評価し、加速度由来の歩容指標のアウトカムとしての妥当性(基準関連妥当性および予測妥当性)を検討することを目的とする。研究協力関係にある病院においてTKAが行われた症例に対して小型センサを用いた歩行動作評価を退院前に実施する。小型センサは下部体幹および踵部に装着し、得られた加速度および角速度データを適切にフィルタリング処理した後、既に地域在住高齢者において信頼性・妥当性が報告されている歩容指標(変動性、規則性、左右対称性の指標)の算出を行う。また、膝関節伸展筋力、6分間歩行試験、Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Scoreの疼痛スコア、症状スコア、日常生活動作スコアの評価を行う。さらに、術後6ヶ月の時点における活動量、疼痛の有無、転倒の発生について、電話調査法により調べる。2019年度では、包含基準を満たす8例のTKA術後患者に対して評価を実施し、研究期間において合計20例の評価結果が得られた。また、その内8名に対して術後6ヵ月の追跡調査が実施できた。基準関連妥当性の検討の結果、下肢の動きの変動性を示す指標が術側膝伸展筋力、術後の疼痛スコアと関連し、体幹運動の左右対称性の指標が日常生活動作スコアと関連していた。予測妥当性については、歩行指標と各アウトカムとの関連性は認めなかった。本研究結果より、小型センサから得られる下肢の動きの変動性を示す指標と体幹運動の左右対称性の指標がリハビリテーションアウトカムとして有用であることが示唆された。追跡調査が実施できた対象者数が少なく予測妥当性については十分な検証が行えなかったことが想定されるため、今後のさらなる検討が必要である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation
巻: 16 ページ: 62
10.1186/s12984-019-0539-3