形外科疾患術後患者の主とする問題は痛みであることが多く,その術後痛の遷延化は日常生活動作を制限する.術後遷延痛の発生率は10-50%であり,その中でも2-10%が重度な痛みを有すると報告されており,それらの慢性疼痛のリハビリテーションは難渋する.また,慢性化させる要因は痛みの強さだけではなく,痛みに対する心理的要因が大きく関与している.中でも“運動恐怖”(=患肢を動かすことへの恐怖心)は,患肢の不動化に続くADL障害の悪化,さらなる術後遷延痛をもたらす.この術後患者が示す運動恐怖を定量評価を構築させ,慢性化させる要因を検討した.術後1日目,3日目の運動の躊躇と運動恐怖に有意な相関関係が認められた.また,運動速度とDASHに術後7日目と術後30日目に有意な相関関係が認められた. さらに,術後30日目のDASHのカットオフ値からGood improvement groupとSlight improvement groupに群分けを行い,Slight improvement groupの特徴を調査した. その結果,Slight improvement groupは,Good improvement groupと比較し,術後1日目の運動の躊躇時間が有意に増加していた.さらに,術後7日目の運動速度は,Slight improvement groupが有意に低下を示していた. しかしながら,安静時痛や運動時痛など,痛みには有意な差が認められていなかった. つまり,これらは痛みによって引き起こされている運動の現象では無いことが示された. 運動恐怖の簡易な定量評価の構築ができたと考えられる.
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