研究課題/領域番号 |
19K21531
|
配分区分 | 基金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
塩見 準 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40809795)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 計算機システム / 省エネルギー / 低消費電力化 / スケジューラ |
研究実績の概要 |
本研究では,与えられた時間制約のもと,最小のエネルギーでプロセッサにアプリケーションを処理させるリアルタイム電圧制御システムを世界に先駆けて開発する.具体的には,(1) 稼働状況の変化に応じて最適な制御電圧を瞬時に決定する電圧最適化アルゴリズムを開発し,(2) 実行アプリケーションに応じて電圧をリアルタイムに最適化するスケジューラの開発を行う. 平成31年度では,与えられた遅延制約(動作速度)を満たしつつ,プロセッサの消費エネルギーを最小化する電源電圧(VDD)とバックゲート電圧(VBG)の組を,幅広い電圧領域において閉形式で,かつ連続的に表現できる近似関数の導出を行った.この近似関数は定格電圧の3分の1以下のサブスレッショルド領域から,定格電圧領域(アバブスレッショルド領域)まで有効であり,このような定式化は世界初の成果である.65nm SOTBプロセステクノロジで試作したRISC-Vプロセッサにて提案手法の検証を行い,現在国際学会発表に向けて成果をまとめている.また,平成30年度の成果に対し1件の表彰があった.過去の研究成果を本にまとめた(令和2年度出版予定). 以上の課題遂行のために東京大学大規模集積システム設計教育研究センターを経由して65nm SOTBプロセステクノロジおよび設計CADツールを利用した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度には,リアルタイムシステム向けVDD/VBG最適化手法の開発を行い,研究成果をまとめ,国際学会へ投稿した.しかし,現在開発している手法では,電源電圧を細粒度に調節することが前提となっており,ハードウェア実装した時のオーバーヘッドが現実的ではない.また,本研究が対象としていた電圧領域が定格電圧領域(アバブスレッショルド領域)に限られているため,消費エネルギー効率が最大化されるニアスレッショルド領域への適用が難しい.以上のような理由から,当初の予定より進捗が遅れている.今年度は,この問題を解決するため,要求遅延制約に応じて,サブスレッショルド領域からアバブスレッショルド領域まで,連続的にVDDとVBGの最適値を導出する方法の検討を行った.
|
今後の研究の推進方策 |
まず,【研究実績の概要】で述べた,幅広い電圧領域で最適なVDD/VBGを決定する解析式および電圧制御手法について成果をまとめ,論文として発表する.その後,提案手法を基に,平成30年度に開発したリアルタイムシステム向けVDD/VBG最適化手法への統合を目指す.65nm SOTBプロセステクノロジで試作したRISC-Vプロセッサには,チップ温度や消費エネルギー,クリティカルパス遅延をリアルタイムにチェックできるモニタ回路が搭載されている.当該プロセッサをベースに,前述のモニタ回路を併用し,リアルタイムにVDDやVBGを最適化できるシステムのプロトタイプ設計を目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
【現在までの進捗状況】に記載した通り,研究計画に遅れが発生した.このため,学会出張のための旅費,実験器具の購入,および論文誌出版費をH31年度内に出費することができなかった.また,新型コロナウィルス対策のため,H31年度3月末に予定されていた打ち合わせが中止となり,その旅費がR2年度に繰り越された.
|