与えられた時間制約のもと、最小のエネルギーでプロセッサにアプリケーションを処理させるリアルタイム電圧制御システムを世界に先駆けて開発する。与えられた遅延制約(動作速度)を満たしつつ、プロセッサの消費エネルギーを最小化する電源電圧(VDD)とバックゲート電圧(VBG)の組を最小エネルギー点と定義する。最小エネルギー点動作に向けて、主に以下の2点に取り組んだ。期間全体を通して、SASIMI2021 Best Paper Awardを含む2件の受賞、1件の国際学会発表、1件の論文誌投稿を行った。東京大学大規模集積システム設計教育研究センターを経由して65nm SOTBプロセステクノロジおよび設計CADツールを利用した。 (1) リアルタイムシステム向け電圧スケジューリング手法の研究(平成30年度) プロセッサに与えられたタスクに対して、デッドラインを守りつつ最小のエネルギーで処理する電圧スケーリング手法を検討した。消費エネルギーと動作速度のトレードオフ関係に大胆な近似を適用することで、活性化率・チップ温度・消費エネルギー(以後、動作状況と呼ぶ)のモニタ結果から、最小エネルギー点をリアルタイムに導出する技術である。 (2) 幅広い電圧領域において最小エネルギー点動作を実現する電圧制御手法(令和元年、2年度) 幅広い電圧領域において閉形式かつ連続的に最小エネルギー点を近似する関数を導出した。この近似関数はトランジスタが弱反転状態で動作するサブスレッショルド領域から、定格電圧領域(アバブスレッショルド領域)まで有効であり、世界初の成果である。令和2年度では、実チップ測定による動作検証を行い、研究成果のまとめを行った。0度から75度の温度範囲で、近似関数による電圧制御により、最適動作時と比べて5%以下のエネルギーロスでプロセッサが稼働できることを32ビットRISCプロセッサの実測を通して示した。
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